ぼくと、むじなと、ラフカディオ。

かつて小泉八雲が自らの感覚で日本を歩きまわって見聞を広めたように、故郷を離れて旅を続けるぼくが、ぼくの感覚でその土地を歩き回って、見たり聞いたり嗅いだり触ったりした、ぼくの見聞録です。

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山頂の不気味な無縫塔と、本当はコワいOZUNOの話。

前回までねえきみ、本当にコワい心霊写真って撮影したことあるかい?の話

 

OZUNOで共有されている様々な心霊スポットの情報に毎夜酒を飲みながら目を通すという日々が一週間ほど続いた。

 

OZUNOに参加しているメンバーは公表としては33人という実に少ない数であり、その中でも実際に自ら情報を発信しているのは管理者の3人を含むごく限られたメンバーのようだった。ただそれらの情報の多くは、半ば異常と言えるくらい信じられないような内容を含むもので、他の心霊系のコミュニティーを念のため覗いてみた比較感からすれば、レベルが違うどころか別次元に近いものだった。

 

多くの心霊系コミュニティーで扱われている話題は、遊び半分の冷やかしや単なる噂、近年になってから創作された都市伝説、不法侵入的肝試し体験、人為的に加工された写真や動画、あるいはまったくのデマという類の、言わば娯楽としての幽霊話的内容がそのほとんどを占めていた。もちろん膨大な情報の中には、それ以外の真実が埋もれている可能性も否定はできないが、情報量から言ってそれを短時間で個人で見つけて判断するのは不可能に近かった。

 

しかしOZUNOで提供されている情報は、管理者の3人が中心となって行われているれっきとしたフィールドワークの調査報告であり、そして心霊探訪コミュニティーと謳ってはいるものの、その情報の中には幽霊や心霊などという話はほとんど含まれておらず、さらには一般的に取沙汰されているような各地の有名な心霊スポットの話などに関してもほぼ一切触れられていなかった。

 

OZUNOで共有されている情報のほとんどは、死んだ人間の霊がいる場所の話ではなく、霊は霊でもまた別の次元の、例えば人間によって昔から神だと崇められていたような古くから存在する特殊な霊の居場所を探訪するとでもいうような趣のもので、特に土地の歴史や民俗信仰、あるいはその土地で広範囲に渡って起こった不可思議な出来事に着目しているものだった。そして何よりその調査報告の一部には、都市伝説や怪談話などがまるで子供の遊びにでも思えるような、常軌を逸して恐ろしい内容も含まれていた。

 

日本の古い民俗信仰に多少の興味を持っていたぼくにしてみれば、単なるフィクションの読み物として捉える分には十分満足のゆく情報ばかりだったが、中には途中で吐き気をもよおすような悍ましい事例も報告されていて、それが真実か否かは別にしても、そもそもぼくがOZUNOに参加した理由である「本物の心霊写真を撮影したい」という、それこそお遊びのような望みを叶えるにはお門違いの場所に感じられた。

 

しかしせっかくテストまでクリアして参加の許諾を得たこのコミュニティーをこのまま去ってしまうのも惜しい気がしたぼくは、参加した理由を明かした上で心霊写真のことを相談してみることにした。OZUNOには指定された時間限定で管理者のいずれかとチャットで話すことができるというシステムが存在した。

 

ある夜、ぼくはそのチャット機能を利用して、管理者のひとりを呼び出してみた。

 

 

シロキ:こんばんは、最近参加したシロキと申します。はじめまして。

 

オズ:ああ、シロキさん、この間入った方ですね。オズです。こんばんは。

 

シロキ:今日は相談がありまして、実はこのコミュニティーに参加した理由なんですが、すべて話すと長いので省略して話すと、本物の心霊写真を自分で撮影してみたいと思ってのことだったのです。ただ扱われている内容を実際にいろいろ拝見して、ちょっと場違いだったかと思っちゃいまして、それでちょっと管理者の方に聞いてみようと思いまして。

 

オズ:ははは、なるほどねえ。心霊写真が撮れる心霊スポットをお探しでしたか。

 

シロキ: いやまあ、厳密に言うとちょっと違うんですが、誰でも簡単に撮影できるものなのかなあと思いまして。今までそういうものに、まったく縁がなかったものですから。

 

オズ:そうですか。テストの際の無縫塔の写真、あれはシロキさんが撮影されたんですよね?

 

シロキ:はい、自分で撮影しました。もしかして、何かそういうものが写っていましたか!

 

オズ:いえ、写真自体には特におかしなものは写っていませんでしたが、あの無縫塔自体がちょっと特殊なものだと思いましてね。形がね、太い大蛇の体のようにうねっていましたよね、確か。

 

シロキ:はい、ずいぶん古いもののようで、表面の石が剥がれて歪んだような形になっているのかと思っていましたが、言われてみれば確かにうねっていましたね。

 

オズ:おそらく、あれは元からうねっているんです。つまり無縫塔ではないし、墓塔でもありません。あれを撮影したのは古い墓地か、あるいは廃寺か、そういう場所ですか?

 

シロキ:近所にある大きな寺院の裏山です。墓地は山の下にはありますが、山自体では墓石などは見かけませんでした。頂上にあの石塔が三つあるのみです。

 

オズ:三つですか?

 

シロキ:はい、写真にあるのは中央に置かれていたもので、その両脇に少し離れて二つ、その二つは比較的新しい形のはっきりした無縫塔で、文字もしっかり書かれていました。

 

オズ:なるほどねえ。今日ではなくても結構なので、今度場所などの詳細を教えていただけますか?ちょっと調べてみたいので。

 

シロキ:はい、もちろん構いません。後ほどメールをお送りします。

 

オズ:そうだ、それでその心霊写真の件ですが、実は来月ここの管理者のひとりが調査を予定している場所がありまして、確かシロキさんがお住いの場所からそれほど遠くはない場所だったと思うので、もし興味があれば同行しませんか?彼女は、あ、女性メンバーなんですが、コミュニティーのハンドルネームではキルクと名乗っています。すでにいくつかの調査報告を読まれたかもしれませんが。

 

シロキ:はい、読みました。あの猿の、信じられないようなすごい怖い話でしたが・・・。あれは創作ではないんですよね?

 

オズ:はい、ここで共有しているは情報は、すべて事実です。その為、基本的には外部への引用や口外などは、基本的に禁止しています。で、どうでしょう?同行の件、彼女は元々プロのカメラマンで、その手のことにも精通しているので、シロキさんの要望にも応えられるかもしれませんよ。それに調査の場所もいままでにないくらいすごい場所なので、本当はぼくが同行したいくらいなんです。

 

シロキ:すごい場所・・・。

 

そしてその数日後に、ぼくは再びOZUNOのチャットでキルクと名乗る管理者のひとりに接触することとなった。

 

山頂の不気味な無縫塔と、本当はコワいOZUNOの話。

 

 

 

 

月白貉