ぼくと、むじなと、ラフカディオ。

かつて小泉八雲ことパトリック・ラフカディオ・ハーン (Patrick Lafcadio Hearn)が、自らの感覚で古き日本を歩きまわって独自の感性で見聞を広めたように、遠く故郷を離れてあてどなき夢想の旅を続けるぼくが、むじなと、そしてラフカディオと一緒に、見たり聞いたり匂ったり触ったりした、ぼくと、むじなと、ラフカディオの見聞録です。

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骨董品のカメラに秘められた恐怖、パラノーマルなアンティーク・ホラー『CAMERA OBSCURA(カメラ・オブスキュラ)』。

近頃めっきり少なくなったが、かつて都市部に住んでいる頃、時々あちこちに散歩に出かけたついでに、骨董品屋とか古道具屋なんかを見て回ることがあった。

 

厳密に言えば、大抵の場合あくまで目的は散歩なので、ふらっと通りかかった街角に古道具屋なんかを見掛けると、ついつい入ってしまうという状況がほとんどではあったが、どこの街にもひとつやふたつそういった店が存在するのである。

 

ちなみに、取り立てて骨董マニアでもなければ古道具マニアでもないし、いわゆるアンティークと呼ばれるものに執着があるわけではない。ただ単純に古い面影を持つものが好きだという理由と、時々にはガラクタ同然の気に入った器などを買ってきて、実用品として使っているという程度である。もちろん買うにしても、せいぜい数百円ほどのものにしか手は出さない。

 

そうやってあちこちの古道具屋を見て回っていたある日、上野の不忍池でたまたま行われていた骨董市に出くわして、その様々な露店に目を向けながらブラブラしていると、ある一角に古びたサーカスのテントのようなものを張って、その中で店を出している見るからに怪しげな古道具屋があった。テントの外にも物が溢れていたが、中はまさにカオスの如き様相を呈していて、その一番奥に埋もれるようにして、丸メガネを掛けてニット帽をかぶって、顔中に髭を蓄えた中年の男性が座ってこちらを見ながらニヤニヤと笑っていた。

 

その店は扱っている商品もかなり独特なもので、置いてある品物の多くが古い人形の類、しかも日本製のいわゆる日本人形ではなく、ほとんどが海外のものだった。例えばフランス人形だとか、中国の古墳から出土したような焼き物の人形だとか、あるいはアフリカあたりで何かの儀式にでも使われていたんじゃないのかというような薄汚れた木彫りの人形とか、そしてどれもかなり異様な雰囲気を醸し出していた。さらにテントの奥には、現在ではワシントン条約にでも引っかかるんじゃないのかと思われるような様々な動物の剥製がびっちりと並べられていた。

 

そんな風なのでさすがに気安く入れるような空気ではなく、テントの中に入ろうかどうしようかと躊躇しながらテントの入口付近の怪しげな木彫りの人形を眺めていると、店主らしき男性が声を掛けてきた。

 

「あっ、その人形はね、ちょっとあまり触らないほうがいいよ、それはちょっと危ないやつだからね。」

 

物腰は柔らかく、とても穏やかで明るい感じの店主だったが、話の内容が異常だったので顔を引きつらせながら、「えっ、あぶないっていうのは?」と尋ねると、さらに楽しそうな笑みを浮かべた店主が優しく説明してくれた。

 

「それはねえ、まあ元の持ち主がねえ、アフリカで買ってきたらしいんだけれど、土産物じゃなくて本物のやつだったらしくてねえ、家に置いといたら、まあいろいろあったらしくてねえ、怖くなってウチにもってきたんだよ。」

 

そうやって色々話している内に、結局テントの中に入ってしまったのだが、完全に何かの重圧を感じるような気がして、あまり長居は出来なかった。品揃えと店主の話に関してはずば抜けておもしろい店ではあったが、置いてある人形のほとんどがいわく付きだというような話しぶりで、触る時にはひと声かけてくれというようなことを言っていた。触ってしまってはかなり危ない物があるからだという。

 

「そのフランス人形はね、抱っこしてみても大丈夫だよ。まあ気に入られちゃうとちょっと厄介だし、ちょっと動くかも知れないけど、このテントからは出られないからね。あなたの家まで付いていくってことはないから、だいじょうぶ。」

 

「えっ、気に入られちゃうっていうのは、ぼくが人形に気に入られちゃうってことですか?」

 

「そうそう、あなたが来る前もね、ずっとあちこち動きまわっちゃって、大変なのよ。」

 

そんなような話ばかりだった。

 

本題から大いに遠ざかる前に軌道修正をしよう。今回は恐怖の人形の話ではないのだけれど、骨董品、つまりアンティークに絡むホラー映画の話題を取り上げてみたい。

 

アーロン・B・クーンツ(Aaron B. Koontz)監督による『Camera Obscura』という作品である。

 

 

タイトルになっている“Camera Obscura”(カメラ・オブスキュラ、カメラ・オブスクラ)というのはラテン語で暗箱を意味する言葉、つまりこれは、暗い部屋や箱に空けた穴を通して外界が上下逆さまに映し出されるという、カメラの原型を指す言葉なのである。

 

さて、それを踏まえて本作品の内容であるが、過去に心的外傷後ストレス障害、つまりPTSDを患ったことのある主人公の戦場カメラマンが、第2次世界大戦以前に製造されたアンティークなカメラを婚約者からプレゼントされるという話から幕を開けるらしい。しかしそのカメラで撮影した写真には・・・、という物語のようである。

 

前述の人形に限らず、古道具やアンティークの品には、おかしな力が宿ってしまったものがあるという話はわりとよく耳にする。数年前に知り合いから聞いた話にも、古道具屋で娘の為に買ってきた姿見が実はただの姿見ではなかったらしく、その姿見を使いだした娘の部屋からある日凄まじい悲鳴が聞こえてきたので慌てて駆けつけると、娘が床にしがみ付いて、「鏡に吸い込まれる!助けて!!」と泣き叫んでいたという。

 

骨董品やアンティークには十分気を付けていただきたい。

 

とまあそんなわけで、最後に本作品の予告編をご覧いただきたいのだが、その前にひとつ、本作品の監督アーロン・B・クーンツの制作した短編作品が公開されているので、もし興味のある方はまずそちらからご覧いただきたい。

 

タイトルは『Malevolence』、悪意あるいは凶悪性という意味かな・・・。

 

 

そして続いて、本題である『Camera Obscura』の予告編を、ぜひどうぞ。ちなみに本作品は2017年6月9日公開予定だそうであるよ。

 

 

 

 

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