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ぼくと、むじなと、ラフカディオ。

かつて小泉八雲が自らの感覚で日本を歩きまわって見聞を広めたように、故郷を離れて旅を続けるぼくが、ぼくの感覚でその土地を歩き回って、見たり聞いたり嗅いだり触ったりした、ぼくの見聞録です。

“アナベル”でも“チャッキー”でもなく今度は“ハイジ”だ、恐怖のモキュメンタリー人形ホラー『HEIDI』。

かつてぼくが住んでいた実家には、母方の曾祖母の部屋だったという随分古びた小屋があった。

 

ぼくが生まれてすぐの頃は曾祖母も生きていたようで、昔の写真を見ると赤ん坊のぼくを抱いた曾祖母の姿が写っているが、幼少期に曾祖母と触れ合った明確な記憶は、意識的には頭の中に探し当てられないので、おそらくはぼくがまだ物心付く前にこの世を去ったのだと思う。

 

曾祖母の部屋は、その死後も随分長い間そのままにされていた。曾祖母が使っていた家具なども、特に処分することもなく置かれていたので、見様によってはまだ曾祖母が生きてそこで生活をしているような場所だった。

 

そしてその部屋には、立て掛け式の階段が付いた屋根裏部屋があって、その中だけは不要なものが片付けられて実家の物置のように使われていた。例えば来客時に必要な大量の食器だとか、特別な料理に使う大型の鍋だとか、普段は使わないテーブルだとか、あるいは季節用品である扇風機やストーブだとか、そういうものが仕舞い込まれていた。

 

そして、ぼくがまだ子供の頃、時々母や祖母に頼まれて食器や鍋なんかをその曾祖母の部屋の屋根裏に取りに行かなければならないことがあった。

 

ぼくの家は古くからの商家で、当時の敷地内には江戸期の崩れかけた土蔵が連なっていたり、樹木が鬱蒼と茂った小さな庭があったりして、日の当たらない薄暗い迷路のような場所が多かった。そして曾祖母の部屋はその最深部、敷地内の一番奥にあり、脇には古くから祀られたお稲荷様の社が建てられていた。

 

昼間でもほとんど日の光が届かない、やけに暗い場所だった。

 

当時のぼくは、その曾祖母の部屋のある場所がとんでもなく怖ろしかった。もちろん単に暗いからということもあったのだが、主を失った部屋というものは何か不気味な影を宿しだす。その上、そんな場所に物を取りに行かされるのは大抵は夕餉の支度をしている時間、つまり日暮れなのである。

 

昼間でも暗いその場所の夕暮れ時の不可思議な空気の色合いと言ったら、もう尋常な怖さではなかった。そこまで辿り着くだけだって怖ろしいのに、それに加えて部屋の中に入り、さらには屋根裏に足を踏み入れなければならないという、ちょっとした肝試し的趣さえあった。そして、曾祖母の部屋には、ぼくを怯えさせる要素がもうひとつあった。

 

部屋の中には、優に100体はあろうかという大小様々な日本人形が置かれていたのである。

 

というわけで、今回取り上げるのは“人形”をテーマにしたホラー映画の話題なのだが、無駄な前置きがアホみたいに長くなってしまった。

 

しかし時には無駄を慾ることも大いに必要であろう。

 

さて、人形をテーマにしたホラーというと、つい先日このウェブログでも触れたジョン・R・レオネッティ(John Robert Leonetti)監督の『アナベル 死霊館の人形』(Annabelle)だったり、米国におけるマスター・オブ・ホラーのひとりトム・ホランド(Tom Holland)監督の『チャイルド・プレイ』(Child's Play)だったり、あるいはデヴィッド・シュモーラー(David Schmoeller)監督の『パペットマスター』(Puppet Master)だったり、他にも様々なものがある。

 

PUPPET MASTER

PUPPET MASTER

 

 

人形というのは、読んで字の如く人の形に似せて作られた物、ということ。先史時代から存在すると言われているのでその起源は随分と古いが、元々はおそらく儀式的意味合いの非常に強い道具だったのだろうと、容易く想像できる。もちろん現在でも、宗教儀式あるいは民俗儀礼に無くてはならない物のひとつではないのだろうか。

 

なぜ人は自分の似姿を創り出す必要があったのか?ということを考え出すと、この人形というテーマはもう完全にホラー要素の塊だと言えなくもない。

 

ぼくはかつて“フィギュア”を蒐集していた時期があり、一時は部屋の中に300体を超す人形が置かれていたのだが、部屋を訪れたとある知人に「こんなに人形がいて、夜とか怖くないの?」と聞かれたことがある。その当時はそんなことまったく感じたこともなかったのだが、今思えばフィギュアに興味のない人から見ればぼくの部屋は異常だったに違いないし、ある意味怖ろしかったのだろうと思う。

 

先に述べたが、曾祖母の部屋に置かれた無数の日本人形が、ぼくの目には恐怖にしか映らなかったことは、ぼくの部屋の無数のフィギュアを目にした知人の状況と何ら変わりがないのである。

 

けれども、ぼくのフィギュアにしても、曾祖母の日本人形にしても、なにか怪しげな儀式を行うためのものではなく単なる蒐集品に過ぎない。ただしである、よくある話だが、その人形への思い入れが強すぎるあまりに、そこに何かの超常的な力が宿ってしまうことがある、ということもよく耳にする。つまり、たとえ現在の人形というものの存在が一般的には娯楽化したとは言え、根本的な部分では、人形という物がやはり人の似姿としての儀式的な道具だという部分が失われているわけではないのだろう。

 

さて話をもとに戻して・・・、ダニエル・レイ(Daniel Ray)監督による『Heidi』(ハイジ)という作品を取り上げてみたい、もちろん人形ホラーである。

 

Heidi

image source : https://www.facebook.com/heidithedoll/

 

この物語は、2人の高校生が屋根裏部屋で不可思議な人形を発見する、というところからはじまる。それが恐怖の幕開けだということは、言うまでもない。そして、この作品の要素として登場する“屋根裏部屋”と“人形”というものから連想されたのが、冒頭の曾祖母の部屋の恐怖だったので、その無駄話に偏ってしまったのだね。

 

人形ホラーの特徴として、恐怖の対象として子供の姿を象った人形が登場することが実に多いような気がする。幼児だったり、少年や少女だったり。“アナベル”しかり、“チャッキー”しかり、まあ『パペットマスター』はちょっと異質なものだけれど。

 

世に溢れているごく一般的な人形の多くが子供の似姿だという理由なのか、あるいは人形というものを使って子供の持つ純粋な邪悪性の恐怖を描き出そうとしていることが理由なのか、まあいずれにせよ子供の姿をした人形というものは、時としてやけに不気味に感じることがある、日本人形にしても海外のアンティークドールにしてもね・・・。

 

というわけで、作品の話ではなく人形の話がメインになってしまったが、最後に『Heidi』の予告編を取り上げておくので、人形ホラーに目がない方は、ぜひご覧いただきたい。わりと人形ホラー“あるある”的なスタンダードな内容のように感じるが、ジャンルとしては人形ホラーというだけでなく、モキュメンタリーでもあるよ。

 

 

 

 

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