ぼくと、むじなと、ラフカディオ。

かつて小泉八雲が自らの感覚で日本を歩きまわって見聞を広めたように、故郷を離れて旅を続けるぼくが、ぼくの感覚でその土地を歩き回って、見たり聞いたり嗅いだり触ったりした、ぼくの見聞録です。

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ベジタリアンの彼女の中に芽生える禁忌の肉の味、カニバリズム・ホラー映画『RAW』。

開高健の食談『最後の晩餐』の“最後”の数十頁を飾る晩餐の話は、中華料理でもフランス料理でも、もちろん日本料理でもなく、人肉嗜好の話である。

 

昨今ではあまり日常的な話題ではないのが、人肉嗜好とは英語圏でカニバリズム(Cannibalism)とかアントロポファジー(Anthropophagy)とか呼ばれる、人間が人間の肉を食べる行為、あるいは習慣のことを言う。世界にもまだまだ存在する原住民族の風習としての食人に関しては、耳にした方も多いと思う。

 

文化人類学においての食人の習俗は、その地域の社会的制度的に認められた範囲内の行為を指し、一時的な飢餓による食人や、あるいは認知外の特殊な信仰および精神異常による食人は含まないとされている。ちなみに生物学での「カニバリズム」とは種内捕食、いわゆる「共食い」全般を指すとも言われる。

 

開高健の語る人肉嗜好の話は、一時的な飢餓から命を守るための緊急的な状況のものであったり、それこそ嗜好の名のごとく味わうためのものである話がその殆どを占めている。ちなみにそれらは遥か遠くの見知らぬ国々の話だけではなく、古くは日本でも人間が人間を食べるという行為は、行われてきているという話。籠城戦での飢餓によるものもあれば、土俗として死んだ身内の肉を食べるという行為もある。ちなみに後者においては現在でも「骨噛み」という姿で残存している地域もあると聞いたことがあるし、実際にリリー・フランキーの『東京タワー 〜オカンとボクと、時々、オトン〜』の中では、確か骨噛みの風習が描写されていたと記憶している。

 

さて今回も映画の話題なのだが、映画に関していえば人肉嗜好の話は実に様々な作品で描かれているので、今回その詳細をここで述べるには気力と時間と資料の不足という諸事情において、別の機会に譲りたい。ただこのウェブログでも時々触れる「ゾンビ映画」に関していえば、あれは完全に人肉嗜好ないしはカニバリズムの話である。ジョージ・A・ロメロの『ゾンビ』(Dawn of the dead)に登場するゾンビたちは、確か人間の肉しか欲していなかったはずで、犬には見向きもしないというようなシーンがあった記憶が薄っすらとある。つまり人間が人間の肉を嗜好し喰らうようになるという、ある意味では原始回帰がテーマになっているのではないだろうか。まあ個人的にはそれをもっと突き詰めてゆけば、ゾンビ映画の本当のテーマは楽園回帰であろうと考えている。

 

さて前置きが長くなったが、今回取り上げる映画は、まさに上記のジャンルに含まれる作品。

 

フランス人女流監督ジュリア・デュクルノー(Julia Ducournau)による『Raw』である。

 

Raw

image source : http://www.focusfeatures.com/raw

 

このタイトル「Raw」とは「生(なま)」、つまり“生肉”のこと。何の生肉かといえば、それはご想像におまかせするが・・・。

 

簡単なあらすじはといえば、菜食主義者、いわゆるベジタリアンである主人公の若い女性が、獣医学校で肉食のイニシエーション儀式を受けた後に、彼女の中に禁忌の肉の味への欲求が広がりだすというもの、この時点で完全にホラー映画だということがわかる。

 

ちなみにちょっとだけ話を戻すと、ぼくはもちろん人間の肉など食べたことはないのだが、まあここでちょっとハッタリを効かせて「ぼくは実は人肉を食べたことがあって」と書こうとも思ったのだが、ジョークとして理解されないとコトなのでやめておいて、食べたことはないのだけれど、人間の肉は「ひどくまずい」という都市伝説まがいの噂をよく耳にする。けれど、一方でよく耳にするのが、それは人肉嗜好を封じるために流されている情報操作であって、本当は美味だという話。某国で起こったとある悪魔崇拝に絡む事件での容疑者は、「あれを食べてしまうと他の肉など不味くて食べられなくなる」と言っていたとか・・・。まあこのネタはなかなか興味深く書くことは他にも山ほどあるのだが、話がエスカレートする前に、幕を下ろす。

 

というわけで、『Raw』のレッドバンドな予告編が公開されているので、興味を持っちゃった方は、ぜひご覧いただきたい。アメリカおよびフランスなどでの公開は2017年3月とのこと。ちなみにグリーンバンドの予告編も公開されているが、ここで取り上げるのはあえて血の色ばりにレッドバンド、こわいけど・・・すごくおもしろそうだよ。

 

 

 

 

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