ぼくと、むじなと、ラフカディオ。

かつて小泉八雲ことパトリック・ラフカディオ・ハーン (Patrick Lafcadio Hearn)が、自らの感覚で古き日本を歩きまわって独自の感性で見聞を広めたように、遠く故郷を離れてあてどなき夢想の旅を続けるぼくが、むじなと、そしてラフカディオと一緒に、見たり聞いたり匂ったり触ったりした、ぼくと、むじなと、ラフカディオの見聞録です。

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大友克洋の『AKIRA』を匂わせるSF短編アニメーション、『POWER HUNGRY』。

ずいぶん昔の話だが、ぼくは海外輸入専門の映像ソフトを取り扱う店で働いていたことがある。

 

店の雰囲気をイメージで言うと、トニー・スコットが監督、そして脚本をクエンティン・タランティーノが手掛けていた『トゥルー・ロマンス』(True Romance)で、クリスチャン・スレーターが演じる主人公のクラレンス・ウォリーが働いているコミック・ショップみたいな趣だった。

 

そして、その頃のぼく自身の生活スタイルも、ある側面においてはクラレンスみたいだった。

 

映画に囲まれた店の仕事が終わると、家に帰って酒を飲みながらまた映画を観る。そして眠る。ただそれだけの繰り返しだったような記憶がある。

 

当時は何年もまったく女っ気のない生活を送っていて、でもすっごく恋人が欲しくて足掻いていた。時々気になった女の子を誘って飲みに行くのだが、ぼくの偏った映画趣味の話を熱を込めて話しても相手には通じず、結局一回きりの短いデートばかりで、お酒を飲み終わるとすぐに彼女たちは帰って行ってしまい、それっきり、まったく誰も寄り付かなかった。そして映画と決定的に違うところがひとつ、クラレンスみたいな劇的な出会いは、残念ながら一度もなかったということ。

 

そんな日々の中で、ぼくの働く店はちょっとコアな方向性だったということもあり、ひと癖もふた癖もある客ばかりだった。そして今日の朝、とある短編のアニメーション作品を鑑賞していて、ふと思い出した店でのエピソードがある。

 

大友克洋の同名の原作をアニメーション化した劇場版映画の『AKIRA』(アキラ)にまつわる話。

 

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ちなみにぼくは『AKIRA』の漫画自体は一度読んだか読まないかくらいのもので、アニメーションに関しても何度か観たことがある程度、もちろんあの世界観やタッチは好きだが、それほど思い入れのある作品ではない。

 

ある日、店頭で『AKIRA』の輸入盤ソフトの映像を流していると、そのモニターの横でずっとその映像を観ていた客がカウンターのぼくのところにやって来てこう言った。

 

「あの戦車のシーンを、もう一度見せてもらえませんか。」

 

 

その日は暇だったこともあり、もちろんぼくは快く彼の申し出を受け入れ、リモコンで該当するシーンのところまで映像を戻した。劇中でも特に印象的な、特殊能力に覚醒した鉄雄が、戦車の弾を受け止めるシーンである。するとその客はウンウンとうなずきながらこう言った。

 

「やはりここ、ちょっとノイズが入ってるんですよねえ、もう一度いいですか?」

 

ぼくはもう一度映像を戻し、彼と一緒にそのシーンに見入ったのだが、一体何がノイズなのかは正直よくわからなかった。しかし彼は、ぼくに「ありがとうございました。」と満足そうに笑いかけて、店を出ていってしまった。

 

特に何かオチのある話ではないのだが、なぜかその時のことが強烈に頭に残っている、もちろん鉄雄のシーンも含めて。

 

さて最後になったが、そのことを思い出したキッカケは、以下の短編アニメーションである。

 

ニューヨークでアニメーション関連の仕事に携わるアーティスト、ベンジー・ブルック(Benjy Brooke)さんの『Power Hungry』という作品。

 

Power Hungry

image source : Benjy Brooke on Vimeo

 

この作品、完全に『AKIRA』からインスピレーションを受けて制作されているはず。

 

本編を観る前にすでに、扉のサムネイル画像が例のあの子供たちと同種であることは、たぶん言うまでもない。

 

というわけで、本作品は『AKIRA』の知識云々に関わらずなかなかおもしろいので、お暇な方はどうぞ。

 

 

 

 

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