デヴィッド・F・サンドバーグ作品には欠かせない、ロッタ・ロステンという女優。
映画のクオリティーを大きく左右する要因には、その見方によって様々あるとは思うのだが、その核を担っている幾つかの絶対的なものが存在する。
ひとつはもちろん、作品を大きく握りしめる監督、そしてもうひとつは作品を彩る俳優というものが挙げられるだろう。決してこれだけではないが、このふたつはかなり重要な部分を占めている。
というわけで、今回はひとりの女優の話題を取り上げたい。
先日このウェブログでご紹介した「デヴィッド・F・サンドバーグ」という映画監督。
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詳細は上記で述べているので、お暇な方はお読みいただきたいが、彼はいわゆるホラーな短編作品をいくつも手掛けているスウェーデンの映画監督である。そして彼の作品に欠かせないのが女優のロッタ・ロステン(Lotta Losten)、もっと言えば彼の作品のほとんどには彼女しか登場しない。
ロッタ・ロステンはスウェーデンの女優であり、デザイナーかつフォトグラファーでもある。そして監督であるデヴィッド・F・サンドバーグの妻なのである。
image source : David F. Sandberg on Vimeo
そもそも彼が妻を主演女優として短編作品を作り出したのは、拠点としているスウェーデンで映画制作をするために国の助成金を申請して資金を得ようとした際に、結局その申請が通らなかったことが切っ掛けだったという。
まあじゃあ、「もうどうにでもなれ!」ということで、自分たちだけで作品を作り出すことになる。「自前のカメラはあるし、妻は女優だからね。」というわけである。
撮影のためのライトをイケアで購入し、撮影用のカメラを載せる台も2人の手製。そして完成したのが2013年の『Cam Closer』(カム・クローサー)という作品。
当時この作品をネットに投稿したが、ほとんど大きな反響はなかったという。
しかし2人はこの作品の出来に大いに満足し、さらに作品を作ろうということで、イギリスの短編ホラー映画配信サイト「Bloody Cuts」(ブラッディ・カッツ)で行われていた短編映画のコンテストに向けて『Lights Out』を制作したという。
この作品が火種となって、それはではまったくの無名だった彼は一気にメジャーへと駆け上がることになる。
彼の作品をいくつか観ていると、そのクオリティーはもちろん監督の手腕という部分もあるが、女優であるロッタ・ロステンの存在感にずいぶんと大きな部分を感じる。彼女でなければあの作品の雰囲気は完成されていなかっただろうと思う。例えばそこには夫婦という信頼関係とお互いの理解があるからこそなのかもしれない。そして彼の短編作品にもし、ハリウッドのセレブ女優のようなスタイル抜群のうら若き女優が出演してたら、まったくもっておもしろくもおかしくも、そして恐くもない作品になっていたのではないだろうか。
まあ長編としてリメイクされている『ライト/オフ』には、そりゃいろいろな大人のしがらみで、美人女優が出てくるだろうけれどさ・・・。
ちょっと趣の違う話だけれど、ぼくの大好きな日本の映画監督、伊丹十三。
彼は自身のほとんどの作品の主演に、女優であり妻でもある宮本信子しか起用しなかった。言ってみれば彼女を主役で演じさせるための映画を作り続けたと言っても過言ではない。そして伊丹十三自身は「宮本信子こそ最高の女優である!」と語っていたと聞いたことがある。
きっと伊丹十三とデヴィッド・F・サンドバーグは、ある部分において同じヴィジョンを持っているのかもしれない。だから優れた作品を生み出すことが出来るのだろう。
というわけで、最後にデヴィッド・F・サンドバーグとロッタ・ロステンの記念すべき作品、『Cam Closer』を御覧いただきたい、もうすでに観てるよって人も、もう一度ね。
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