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ぼくと、むじなと、ラフカディオ。

かつて小泉八雲が自らの感覚で日本を歩きまわって見聞を広めたように、故郷を離れて旅を続けるぼくが、ぼくの感覚でその土地を歩き回って、見たり聞いたり嗅いだり触ったりした、ぼくの見聞録です。

パラノーマルなニオイの謎と、本当は恐いパラノイア臭の関係性。

数日前から部屋の中におかしな臭いが漂っていることに気が付く。

 

午前中は田畑などで野焼きをしている際のような何かが焼ける臭いがし、午後になると次第に魚の腐ったような臭いに変わり、さらには夜になると煙草の煙のような臭いが部屋の中を漂っている。

 

はじめは近隣の何かの臭いが部屋の中に紛れ込んできているのかと思い、さほど気にもしなかったのだが、日増しにその臭いが明確になり、より激しく鼻を突くようになり、さらにはほぼ毎日、部屋の中を何かが歩き回ってでもいるかのように、様々な場所で臭いが漂い続けている。

 

しばらくしてからその臭いの発生源を探そうと思い、いろいろな場所を調べてみたのだが、何かこれと言って臭いを放っているようなものは部屋の中には見当たらなかった。

 

一度、臭いを強く感じている瞬間に窓を開けたり外にまで出ていってみたりしたのだが、どうやらその臭いは外からのものではないらしい。

 

それでは換気扇を通じて何処かから流れ込んでくる臭いなのかとも考えて、換気扇に鼻を近づけて何度も嗅いでみたのだが、これもどうやら違うようである。

 

おかしな臭いは、確実に部屋の中で発生して、部屋の中を漂っている。

 

けれど、どうにもその場所が特定できないし、原因もわからない。

 

次第に何かの不安が心を襲うようになり、我慢しきれなくなった私は妻にそのことを話してみることにした。

 

「ねえ、ここ数日、朝とか、眠る前とかさ、部屋の中でおかしな臭いがしない?」

 

「え、ほんと、あたしは全然臭わないけれど、どんな臭いがするの?」

 

「いや、なんだか煙みたいな臭いとか、生臭い腐ったような臭いとかさ、気が付かなかった?」

 

「いや、全然気が付かなかったけれど、換気扇か何かから、外の臭いがたまたま流れ込んできたんじゃないの。」

 

「いやいや、外も換気扇も確かめたんだよ。でも違うんだよ、部屋の中にその臭いの発生源があるような気がするんだよ。」

 

「生ゴミだってちゃんと処理してるし、あたしもあなたも煙草吸わないでしょ。」

 

「まあ・・・、まあそうなんだけど、どう考えても外からじゃないんだよ。」

 

「ふ〜ん、なんだかイヤね、幽霊でもいるのかしらね。」

 

「えっ、幽霊?」

 

「職場にね、すっごい霊感が強いっていうおばさんがいるのよ。その人がこの間の飲み会でね、居酒屋に入るなり、臭い!臭い!っていい出してさ。あたしにも他の同僚にも何も臭わないのよ。だからさ、何が臭いのかって聞いたら、この空間におかしなものがいるって言うのよ。おかしなものって何ですか?って聞いたらね、霊的なものだって。」

 

「霊的なもの・・・、つまり目には見えない何かが臭いを発しているってこと?」

 

「そういうことだって、死んだ人間の霊の中には、まあ幽霊ってことだと思うけど、臭いを放っているものもいるんだって。ただ霊的な存在の中には、人間の霊以外にもいろんなやつがいるらしくてね、そういうちょっとアブナイやつは、特に強烈な臭いを放っているからすぐにわかるんだってさ。」

 

「その話の流れで行くとね、この部屋におかしなものがいるってことだよね・・・。」

 

「ははははっ、そうかもね。あっ、あれだよ、気になるんだったらさ、家の中でおかしなものがいそうな場所、ビデオカメラで撮影してみたらいいじゃないの。よくテレビの心霊番組とかでさ、定点カメラみたいな感じでやってるじゃない。」

 

「ああ・・・、そうだね・・・、ちょっと考えてみるよ。」

 

「変なもの映ってたら教えてね、じゃあ、明日ちょっと早いから、あたしは先に寝るから、おやすみなさい。」

 

「ああ・・・、おやすみ。」

 

私は、その臭いから気を紛らわせるために、妻の冗談半分の提案を採用し、部屋の中で直感的に気になる場所をいくつか選んで、臭いが強くなった頃合いを見計らってビデオで撮影してみることにした。

 

2016年11月1日、第一回目、外出時に居間の押し入れを正面から撮影、異常なものがカメラに映っている。

 

 

 

 

 

月白貉