ぼくと、むじなと、ラフカディオ。

かつて小泉八雲ことパトリック・ラフカディオ・ハーン (Patrick Lafcadio Hearn)が、自らの感覚で古き日本を歩きまわって独自の感性で見聞を広めたように、遠く故郷を離れてあてどなき夢想の旅を続けるぼくが、むじなと、そしてラフカディオと一緒に、見たり聞いたり匂ったり触ったりした、ぼくと、むじなと、ラフカディオの見聞録です。

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アイスランド魔術への誘い、金運を呼ぶネクロパンツについて。

ちょっとハロウィン向けの話であり、やや学術的な目線の話ではあるが、人によっては若干の衝撃を含む内容かもしれないので、苦手そうな方はご注意を。

 

世の中には金運グッズなるものがある。

 

ぼくはそういうものを今まで持ったことがないので、あまりよく知らないが、例えばパワーストーンだとか、七福神の乗った宝船だとか、あるいは神社でもらってきたお守りだとか、そういうものがメジャーなのかな、きっと。

 

17世紀のアイスランドにおける魔術では、死んだ人間の皮膚から作ったパンツを履いていることが、金運に最もいいと考えられていたそうである。

 

その名もネクロパンツ(Necropants)、厳密にはNábrókと表記するようである、発音できないけど。つまりは、「死のパンツ」(death underpants)という意味である。

 

アイスランドにある「The Museum of Icelandic Sorcery & Witchcraft」という博物館には、現物でこそないのだが、そのレプリカが展示されている。

 

Nábrók Necropants

image source : Bernard McManus | Flickr

 

念のため一部ボカシを入れているが、これがネクロパンツ。後述するが、実はこのボカシを入れている部分こそが、このネクロパンツにおいては最重要な場所なのである。

 

さて、この金運ネクロパンツを手に入れる方法であるが、まずは親しい知り合いに「お前が死んだら、お前の死体を土から掘り起こしてネクロパンツをつくってもいいか?」という感じに、事前にきちんとした承諾を得ておかなければならない。

 

まあ、あたりまえである。

 

そして次に、ついにその承諾を得た人物が死んで土葬にされたところを掘り起こして、その死体の下半身の皮を剥ぐわけである。そしてそれを四六時中、肌身離さず履くわけであるが、ここでひとつ重要なポイントがある。

 

クリスマスの期間中に、貧しい未亡人からコインを盗み、新しく手に入れたネクロパンツの陰嚢の部分に、そのコインを入れておく必要がある。

 

さらにコインと一緒に、「Nábrókarstafur」と呼ばれるアイスランド魔術における記号の記された布なり紙なりを入れておかなければならない。

 

レプリカの右に小さく写っているのが、「Nábrókarstafur」である。

 

これで一生、お金には困らない。

 

なかなか凄まじい金運グッズに感じられるかもしれないけれど、おそらく当時はどのような国においても、似たようなものは存在したのではないかと思う。

 

昨今の映画の中には、これに非常に似ているものが度々登場する、特にホラー映画などには多いと感じる。

 

例えばひとつ例を挙げるならば、厳密にはホラー映画ではないけれど、かの名作「羊たちの沈黙」(The Silence of the Lambs)がある。映画の中に登場する連続殺人犯のバッファロー・ビルは、若い女性の皮を剥いで、その皮を使ってドレスを仕立てていた。しかしあれは金運のためではなく屈折した性癖のためであり、なおかつ皮を手に入れるために殺人をおかしているので、まったく異なったものではある。

 

ただこういった物語のベースには、あるいはもしかすると実際にそういう事件が起こっているのであれば、そこには古代の魔術的な要素としての記憶のようなものが、少なからず影響しているのかもしれない。

 

というわけで、ちょっと重苦しい話題だったかもしれないが、実に興味深い金運グッズである。

 

今の日本では、おそらくネクロパンツは法律に触れると思うので(まあ今は土葬じゃないし・・・)、決して真似などしないように、誰もしないと思うけど。

 

死ぬまで一生洗濯しないリーバイスのジーンズのポケットに、幸運のコインとして五円玉を入れておく程度が、おそらく無難であろう、きっと。

 

 

 

 

 

月白貉