ぼくと、むじなと、ラフカディオ。

かつて小泉八雲ことパトリック・ラフカディオ・ハーン (Patrick Lafcadio Hearn)が、自らの感覚で古き日本を歩きまわって独自の感性で見聞を広めたように、遠く故郷を離れてあてどなき夢想の旅を続けるぼくが、むじなと、そしてラフカディオと一緒に、見たり聞いたり匂ったり触ったりした、ぼくと、むじなと、ラフカディオの見聞録です。

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ヴァンパイアは、ニンニク味のドリトスなんか食べない。 - 『ドリトス ガーリックペッパー味』 -

現在の日本において、ハロウィンを待ち望んでいる人が果たしてどの程度いるのかは、文部科学省の調べをまだ参照していないので知り得ないが、ぼく自身は正直言って、どうでもいい。

 

ハロウィンとは、毎年10月31日に行われる行事のことで、一説によれば古代ケルト民族の司祭であったドルイドの宗教儀式が起源のものだと言われている一種の祭事であるが、実際のところその起源については謎が多くよくわかっていないと、ずいぶん昔に何かの本で読んだ覚えがある。

 

よく言われるのは、収穫祭、つまり秋の収穫を祝う祭事であるが、加えて悪霊などを追い払う宗教的な意味合いのあるものだったとされている。

 

日本の秋祭りと呼ばれるものも、地域差はありつつも基本的には収穫祭と悪霊除けというふたつの意味合いを持つものであるというのが、ぼく個人の認識であるが、それはさておき。

 

さてこのハロウィン、現代では特にアメリカ合衆国での民間行事として定着しており、本来の意味合いはほとんどなくなっているとされるが、そもそも本来の意味合いが仮説に過ぎないため、本来もクソもないと思うのだけれど、そこに深く切り込むのは控えておく。ちなみに日本人が、あれはキリスト教の祭事だと思っているケースが多くあるが、基本的にはキリスト教とはまったく関係はない。

 

ぼくがかつて読んだ本によれば、そもそもの起源は、アイルランドかどこかの貴族の住む城に、毎年10月の31日になると化物がこぞってやって来たため、それを追い払うために門の外に化物用の供物を捧げたことが由来になっているとかなんとか、そう書いてあった気がする。それはずいぶんと豪華な食事だったらしいが、あるいは、時代が時代なだけに、化物への生贄のようなものだったのかもしれない。

 

さて、ハロウィンの能書きはこのくらいにして、今日話題にしたいのは、ドリトスである。

 

日本では、このハロウィン時期限定の商品として、『ドリトス ガーリックペッパー味』という真っ黒い色をした期間限定ドリトスを販売しているらしいのだが、そのコンセプトがめちゃくちゃで大いに萎えた。

 

ヴァンパイアは、ニンニク味のドリトスなんか食べない。 - 『ドリトス ガーリックペッパー味』 -

ジャパンフリトレー株式会社

 

このドリトスは、「ドラキュラ」・・・、いわゆる吸血鬼あるいはヴァンパイアをコンセプトに作られている。

 

ドリトス ガーリックペッパー味|商品情報|ジャパンフリトレー株式会社

 

ジャパンフリトレー株式会社のオフィシャルなニュースリリースから、その内容を引用してみたい。

 

◆ガツンときいたガーリックにブラックペッパーをピリッと効かせたやみつきのおいしさです。

◆パーティーの1品として目を引く真っ黒なスナックで、ニンニクが苦手なドラキュラも食べたくなる味をイメージして仕上げました。

◆パッケージもマット印刷を使用したダークなデザインです。

 

はい、ここでヴァンパイア愛好家として、物申したい。

 

ちなみに問題点はいくつかあるのだが、まずハロウィンは日本とは全く関係ないだろというバックボーンは、ここではあえて目を伏せて、商品自体のコンセプトのめちゃくちゃ度合いにだけ目を向けてみたい。つまりハロウィン云々より、商品開発を見直せ、という話である。

 

一番大きな問題、「ドラキュラ」はあくまでも固有名詞であること。これはこのウェブログでも再三触れてきているのだが、このドラキュラというのは、かのブラム・ストーカーが『吸血鬼ドラキュラ』を執筆するにあたりモデルとした実在の人物、ワラキア公国の君主ヴラド3世にちなんだものである。彼は「ヴラド・ドラキュラ」や「ヴラド・ツェペシュ」などという渾名で呼ばれることがあるのだが、その前者をとってドラキュラとされている。詳細はかつて映画『ドラキュラ』の記事で触れているのだが、まあ要点は書いたので読まなくてもいいです。

 


つまり、もしコンセプトに掲げるならば 、厳密には「吸血鬼」あるいは「ヴァンパイア」も食べたくなるような、としなければいけないはずである。ドラキュラも食べたくなるようなとしてしまうと、たったひとりのワガママ君主のために捧げるドリトス的なことになりかねない。ヴラド3世って誰やねん、そんなやつの好み知らんわと、言われてしまう。

 

そして次に、七百歩譲って、ドラキュラはあくまでも吸血鬼あるいはヴァンパイアの代名詞だよ、として捉えてあげるとしよう。ずいぶんと寛容的でしょ、うふ。しかし、そこまで譲ってもだ、

 

「ニンニクが苦手なドラキュラも食べたくなるような味をイメージして仕上げました。」って、どんなイメージだよ、ていうか、ニンニクが嫌いなドラキュラに対して、真っ向からニンニクで責めているだけの味である。バカか。

 

つまり言いたいことをまとめると、コンセプトが子供だましで、かつ嘘が多いのである。そして嘘をついているわりに、まったくおもしろ味にかける。嘘を掲げるなら、それ相応のおもしろさがなければいけないであろうと、思うわけである。

 

例えば、ハロウィンは日本人にはまったく関係ないけれど、大いに盛り上がるから、それにつけ込んで限定商品を作ったら売れると思って開発したのが、今回の『ドリトス ドラキュラの嫌いな味』ですと。ここはあくまでドラキュラの嫌いな味を強調するべきだと思う。せっかくドラキュラをコンセプトに掲げているのに、なんでどこもかしこも出し尽くしているガーリックペッパー味などという素っ頓狂なことを言い出しているのだろうかと、個人的には感じる。

 

そしてドラキュラってのは実は固有名詞だけどねっていう無駄なウンチクも挟みつつ、ハロウィンの仮装によく用いられる化物の中の筆頭のひとつがヴァンパイアであることから、日本人にわかりやすくその代名詞として使っちゃうよと。それでね、実はヴァンパイアはニンニクが苦手らしいから、あいつらを嫌がらせるために、あえてのニンニク・フレイバーにしたから、みんなハロウィンの際の魔除けとして使ってねとかさ。まあ、これはあくまで即興で考えているので、あしからずだが。

 

ただここで、ひとつの疑惑が持ち上がる。

 

もし期間限定ドリトスの、この稚拙なコンセプトが戦略だとしたら・・・。

 

ツッコミどころ満載のコンセプトを掲げることにより、ぼくのような頭のおかしいクレーマーがこぞって突っ込むことで、商品の宣伝に大いに役に立つからと考えていたら。まあぼくのような草葉の陰でやっているウェブログでの発言など物の数ではないが、もし絶大な発言力を誇るクレーマーが大々的に突っ込んだなら。

 

それならそうですごいし、それこそまさに販売戦略だろうと思うが、果たして。

 

そしてもしそうだとしたら、もはや完敗である。

 

という、きょうのわんこ的な、ぼくのきょうのしがないクレームである。

 

ぼく自身は近年、スナック菓子の類は滅多なことがない限り食べないので、いくらヴァンパイア愛好家だとしても、この『ドリトス ガーリックペッパー味』は買わないけどね、たぶん。 

 

そしてもし、『ドリトス ドラキュラの嫌いな味』なら買っていたかと言えば、興味は湧くけど、たぶん買わない。

 

でも、余すところなく血の味を再現した『ドリトス ドラキュラ味』なら、たぶん買う、なんて言うと、大いに頭がおかしいと思われるから、それはまた別の機会にお話しよう。

 

 

 

 

 

月白貉