ぼくと、むじなと、ラフカディオ。

かつて小泉八雲ことパトリック・ラフカディオ・ハーン (Patrick Lafcadio Hearn)が、自らの感覚で古き日本を歩きまわって独自の感性で見聞を広めたように、遠く故郷を離れてあてどなき夢想の旅を続けるぼくが、むじなと、そしてラフカディオと一緒に、見たり聞いたり匂ったり触ったりした、ぼくと、むじなと、ラフカディオの見聞録です。

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秋からはじめる騒霊対策と、『ポルターガイスト』が呪われている理由。

ポルターガイストという言葉がある。

 

厳密にはポルターガイスト現象という場合もあるが、例えば家の中で、誰も手を触れていないのに、茶碗やコップや皿などの物体が移動したり、ドンドンカンカンと物や壁をたたく音が聞こえたり、あるいは突然ある場所で発光現象があったり、もっとひどくなると発火現象がおきたり、そういうことが繰り返し起こることを、俗にポルターガイストと呼ぶ。

 

これはいわゆる心霊現象の一種とされる場合もある。

 

ポルターガイストという言葉が英語だと思っている人は多いと思うのだが、これはれっきとしたドイツ語である。「Polter Geist」、polter(騒がしい)、geist(霊)、このことから、日本語として「騒がしい霊」あるいは「騒霊」などと言われることもある。ちなみに心霊科学研究会浅野和三郎は「騒々しい幽霊」と和訳しているそうである。

 

このポルターガイストが起こる原因については諸説ある。

 

騒霊というくらいだから王道一直線の心霊現象(つまり幽霊の仕業)説や、建物の不良により起こるとされる説、そしてこのポルターガイストが必ず思春期の子供たちの周囲で起きることから子供たちのもつ不思議な能力や情緒不安定によるなんらかの外的なパワー放出にその原因を見る場合もある。

 

例えばコリン・ウィルソンなどは、大抵の場合には幼い少女が原因だと明言している。

 

日本におけるポルターガイストの記録は古く、江戸時代の文献にはすでにポルターガイストと思しき現象の記録がある。例を挙げると、1741年から1747年(寛保から延享年間)の頃に江戸で起きた不可思議な出来事について、1839年(天保10年)頃に出版された東随舎による『古今雑談思出草紙』の中にこんな記述がある。

 

評定所書役の大竹栄蔵が幼少のころ、父親が池尻村(現在の東京都世田谷区池尻)の娘を下働きに雇ったところ、不思議な現象が起こり始めた。天井の上に大きな石が落ちたようなものすごい音がしたり、行灯がふいに舞い上がったり、茶碗や皿などの食器が飛んだり、隣の部屋に移動したりした。現象は次第にエスカレートし、ある日には、雇った男が台所の庭で石臼を使い玄米を精米中、一服している間に、石臼が垣根を飛び越え、座敷の庭へと移動していた。栄蔵の父は連日怪音が続いて困り果てていたが、ある老人が怪現象のことを聞きつけて大竹家を訪ね、もしも池尻村の娘を雇っているなら村へ帰したほうがいい、と助言し、それに従ったところ怪現象が止まった、とされている。

 

これを読むと分かるように、これは完全に下働きの若い娘に、この不可解な現象の原因を見ることが出来る。実に興味深い事例である。

 

さて、ポルターガイスト、そして思春期の子供と聞けば、ああ、そういうことかとお気付きであろうが、日本でのポルターガイストという言葉普及の火付け役とも言える映画が存在する。

 

かの有名な、ほんとうにコワいホラー映画、その名もズバリの『ポルターガイスト』(Poltergeist)である。

 

ポルターガイスト』は1982年に公開されたアメリカ映画で、その内容はといえば、前述しているポスターガイスト現象が、ある家族の幸せな生活を脅かすというものである。

 

製作総指揮をスティーヴン・スピルバーグ、そしてスピルバーグが監督に抜擢したのは、『悪魔のいけにえ』のトビー・フーパーである。これはスピルバーグ自身が『悪魔のいけにえ』に感銘を受けたことによるオファーだという。ただし完成後の作品を観たスピルバーグは、その映画があまりにも恐すぎたことから、「お前、やり過ぎだよ、バカ。」と言って、フーパーにスタン・ハンセン直伝のウエスタン・ラリアットを放ったっとか放たなかったとか。

 

この『ポルターガイスト』には、『ポルターガイスト2』(Poltergeist II: The Other Side)、そして『ポルターガイスト3 / 少女の霊に捧ぐ…』(Poltergeist III)という続編があり、ハリウッドで流行りの全三部作となっている。一応すべてが繋がりを持った話となっているが、『ポルターガイスト3』だけは制作スタッフが一新されており、やや趣の違った作品となっている。

 

ここで、おやおや、と思った方もいるかと思うが、第三作目にだけ副題として「少女の霊に捧ぐ」というものが引っ付いている。これは原題にはないので、日本の配給会社か何かが無駄な味付けをしてしまったようだが・・・、この理由はといえば、三部作を通して主人公となっているキャロル・アン・フリーリング役のヘザー・オルークが撮影後半に急死を遂げてしまったからなのである。

 

そしてこの一連の『ポルターガイスト』では、出演した俳優が撮影後に多数死亡していることでも知られており、呪われた映画と言われている。まあ人はいずれ死ぬのだから、どの映画に出演している俳優もいずれは死亡しているのだけれど、そういう屁理屈はここでは抜きにしてみる。

 

第一作目で長女のダナ・フリーリングを演じたドミニク・ダンが自宅前で元恋人に刺殺される。映画公開の数週間後。

 

ポルターガイスト2』で最恐のケイン牧師を演じた ジュリアン・ベックが、胃がんで死亡。映画公開直前。

 

同じく第二作目で登場する、ネイティブ・アメリカンの最強祈祷師テイラー役のウィル・サンプソンが腎不全で死亡。ジュリアン・ベック死亡の二年後。これはちょっと時間が空きすぎな予感。

 

第一作目で大学の超心理学研究チームのひとりを演じたルー・ペリーマンが、 元服役囚で出所直後の酔った若者に斧によって殺害される。呪い云々よりも死因が恐ろしい。時期はよくわからないけれど、死んだのはずいぶん晩年らしいので・・・、映画に関わってからは、たぶんずいぶん後である・・・。

 

ポルターガイスト2』のブライアン・ギブソン監督が骨髄腫にて死亡。これも監督してからだいぶ経っている・・・。

 

そして全編に登場する主役のキャロル・アン・フリーリング役のヘザー・オルークが撮影中に急死。これが一番有名な話で、すぐこういうことを無駄にアピールしたくなっちゃう日本人は、邦題に入れてしまっている、バカか。本作のエンド・クレジットには「この映画をヘザー・オルークに捧ぐ '75年生'88年没」と出てくるので、タイトルに入れ込むまでもなく、それで十分ではないかと。

 

このヘザー・オルークの死因には諸説あるのだが、クローン病というものやインフルエンザをこじらせてしまったというもの、 病院の正式な発表によれば、腸閉塞による敗血症によって死亡したともいわれているらしい。

 

というわけで、関係した俳優が多数死亡したと言われているのだが、実際には、映画に関係のありそうな程度の死亡時期や、あるいは年齢的なものをみてみると・・・、関連がありそうなのはヘザー・オルークくらいでしょ・・・って、ぼくは思うけれど、みなさんはいかがだろうか。

 

ちなみに、この『ポルターガイスト』は近年リメイクもされており、リメイクにはめっぽう興味のないぼくは、観てもいないし当分観る予定もない。そして、このリメイクにおいては、関係した俳優が死亡するという呪いは発動していないようである。

 

秋からはじめる騒霊対策と、『ポルターガイスト』が呪われている理由。

 

さてでは、このリメイク以前の三部作がなぜ呪われているのかという理由であるが、これは一説には、第一作目の後半、クライマックスのプールのシーンで、プロップ(映画の小道具)に実際の人骨を使用したからだとされている。これは『悪魔のいけにえ』での実際の人骨使用の経験を踏まえて、この『ポルターガイスト』でも同じことがなされた模様である。そしてそれはなにもリアリティーを追求したというものではなく、プラスチック製の偽物よりも本物の人骨のほうがコスト的にお得だったからだという。

 

安物買いの命失い、ということになるのかな。

 

まあとはいえ、このポルターガイスト・シリーズをもしまだ観ていない方がおられるならば、これは実に第一級のホラー映画に仕上がっているので、鑑賞を切におすすめしたい。 ぼくは一作目はDVDで所蔵しているし、後半の二作はなんとBlu-rayで持っている、Blu-rayでしか出ていないからであるが。

 

というわけで、もしこれを読んでいる方の中で、自宅でポルターガイスト現象が多発していて、どうしようもないよ!とお悩みのあなた、まずは全三部作をすべて鑑賞した後に、家で働かせている若いメイドを帰省させるか、霊能力者でお馴染みのタンジーナに、すぐにでもコンタクトをとること、いずれかの対処法を、強くおすすめする。

 

タンジーナ・バロンズ役を演じたゼルダ・ルビンスタインは、さすがは霊能力者役だっただけあって、『ポルターガイスト』の呪いに打ち勝ってか否か、まだ生きているようなのでね。

 

ポルターガイスト [Blu-ray]

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月白貉