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ぼくと、むじなと、ラフカディオ。

かつて小泉八雲が自らの感覚で日本を歩きまわって見聞を広めたように、故郷を離れて旅を続けるぼくが、ぼくの感覚でその土地を歩き回って、見たり聞いたり嗅いだり触ったりした、ぼくの見聞録です。

第十一話『二匹の猫』- 午前0時の、猫たちには見えている、階段の怪談 -

まだ前の話を読んでいない方、この話には前があります。まあ、猫たちにしか見えていない、普通の階段の話ですがね。

 

 

ユカさんは、テーブルの上に置かれたグラスの烏龍茶を、ストローを使ってすごい勢いで一気に飲み干した。そして「は〜っ。」と言って大きなため息を付いた。

 

ぼくも、ジンジャーエールに少しだけ口をつけてから小さなため息を付いた。

 

ダイキさんは、ぼくと同じジンジャーエールをグラスに入れてきたようだったが、「今日、外、暑いな、ビールにすればよかった。」と独り言のようにぼそっと呟いた。

 

「車乗るから駄目でしょ。」と、すかさず横からユカさんのツッコミが入る。

 

「小林くんがいなくなったことと、昨日の夜のことと、後はこのビルにいる、おかしなものが、関係してるってことですよね。」

 

ぼくはグラスの中でプチプチと弾ける炭酸の泡を無意識にみつめていた。でもその瞬間、おそらくぼくの目には何も見えてはいなかったと思う。

 

「それは、あたしにはなんとも言えないよ・・・。まあとにかく、この後どんな展開になるのかわからないけど、川田くんがいろいろな厄介事に巻き込まれないように、言葉は悪いけど口裏は合わせておいて。部屋の中で小林くんが消えたなんて警察に言ってもさ、信じてくれるとは思えないし・・・、そのことで川田くんが何かしたんじゃないかって疑われたら嫌だから。」

 

「わかりました。それは大丈夫です。間違っても、たぶんそんなことは、言いません。」

 

「よしっ!まあ川ちゃん賢いからな、これで情報も共有できたし、その心配はないだろ。」

 

「わざわざ来てもらってごめんね。」

 

「いえ、ぜんぜん。あの・・・、さっきの話に戻るんですけど、このビルにいる何かってのは・・・、人間が死んだ後の霊的なものなのか、それともユカさんがさっき言ってた別なもっと怖いやつなのか、それってユカさんにはわかるんですか?」

 

「あたしは、別なやつだと思う。でも実はね、あたしダイさんと結婚して、今の家に住みだしてから、そういうものがあんまり見えなくなっちゃったのよ。劇的に見えなくなったから逆に怖くなったくらいだけど。結婚したことがなにか精神に影響したのか、住みだしたあの家に何かあるのか、それはわからないの。でもね、猫を飼いだしたのよ、猫がいるっていったでしょ。拾ってきた子猫を二匹飼いだしたことが、何か影響してるんじゃないのかなって思ってるの。」

 

「そうなんですか・・・。でも、家で猫、まったく見かけませんでしたね。」

 

第十一話『二匹の猫』- 午前0時の、猫たちには見えている、階段の怪談 -

 

「ちょっと不思議な猫たちでさ、なにか異質なものが家に入ってくると、どこかに隠れてしまって完全に気配を消すのよ。わたしとダイさんも、そうやって隠れた時には、まったくどこにいるのかわかならないの。たいして広い家じゃないし、隠れるところだってたかが知れてるのよ。外に出ることも出来ないし。でもね、不思議な事にまったくいなくなるのよ・・・。」

 

「へえ、じゃあぼくは、異質なものだったんですね・・・。」

 

「あっ、それはね・・・、あの時、危ないからって言ったでしょ。川田くんの体に、小さな黒い渦が巻き付いてるのが見えたのよ。だからウチに連れてきたの。その猫たちね、姿は隠すけど、もちろん家の中のどこかにいて、入ってきた異物を祓うのよ、小さな物くらいなら。だから今は取れてるはず。」

 

「えっ、こわっ・・・。なんですか・・・渦って・・・?」

 

「わかんない。たぶん本体が何かつけたのか、もしくは本体の切れ端みたいなものかな。だからあの時、三階の窓のおかしなもの、川田くんにもはっきり見えたでしょ?あれね、その渦のせいだと思うの。ダイさんにも見えてたのは、ダイさんにも渦がくっついてたからなの。」

 

「えっ!!!おれにも・・・。だからあんなもの見えてたんだ。おれは霊感が芽生えたのかと思ってさ、ちょっとワクワクしちゃった。っていうのは嘘で、ちょ〜怖いの我慢して平静を装ってた・・・はははは・・・。」

 

ダイキさんが顔を引きつらせておかしな笑い声をあげた。それを見て、ユカさんは笑った。

 

「でも、もう二人とも取れてるから大丈夫だよ。」

 

お題「怪談」

 

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