ぼくと、むじなと、ラフカディオ。

かつて小泉八雲ことパトリック・ラフカディオ・ハーン (Patrick Lafcadio Hearn)が、自らの感覚で古き日本を歩きまわって独自の感性で見聞を広めたように、遠く故郷を離れてあてどなき夢想の旅を続けるぼくが、むじなと、そしてラフカディオと一緒に、見たり聞いたり匂ったり触ったりした、ぼくと、むじなと、ラフカディオの見聞録です。

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蝿(ハエ)の能力値が高すぎて恐怖を感じる件について

部屋が蒸し風呂のように暑いので窓を開け放っていたら、一匹の大きな蝿が入ってきて部屋を飛び回りだした。

 

最初はそのスピードが早すぎて、網膜剥離でも起こして、いもしない羽虫が飛ぶのが見えているのかと思っていたけれど、やはり虫が飛んでいた、蝿だ。

 

夕食の準備をし始めると、食材に接触しようとしだしたので飛ぶ速度が弱まり、いよいよ蝿だと認識出来始めた。

 

家にはハエ叩きなどという高度な道具がないので、新聞紙を丸めて対応しようとするが、一向に歯がたたない。

 

すると台所を一瞬離れて居間で飛び交い始めたので、伝家の宝刀、殺虫剤を吹きかけてみるが、ちょっとフラフラするくらいで逆に移動速度を早めてしまい、どこかに行方をくらましてしまった。

 

はてどこかと探しまわっていると、開け放たれた食器棚の戸の枠の内側の影に、こっそりと身を隠している。明らかに人間が見えない場所というものを熟知している。

 

怖ろしい。

 

そのスピードもさることながら、人間対応マニュアルが身に組み込まれているのが、なんとも恐ろしくてならない。

 

こちらも必死なので、その場所を見つけると、ハッと目が合う。

 

すると今度は居間においてあるiMacの上まで高速で飛んでゆき、そこに止まったかと思うと、背後に身を隠すようにゆっくりとモニタの後ろに歩いてゆくが、行ってみると、もちろんそこには、いない。

 

誘導トラップである。

 

こちらの行動を完全に読んでの、罠を持つ動きを展開し始めている、殺虫剤を喰らっているのにだ。

 

怖ろしい。

 

気付くとまた台所にいる。

 

あれは完全に瞬間移動の能力を持っているはずだと、確信する。

 

結局、死闘は一時間に及ぶ。

 

最後は殺虫剤乱舞からの新聞稲妻落とし、こちらも必死である。「とりゃあ〜っ!!!」と叫んで叩き潰して殺した。勢い余ってそのまま床に手を叩きつけて、血を流す。

 

怖ろしい。

 

もしあれが、小さな体ではなく人間と同等のサイズだったら、初見でこちらが瞬殺されていることは間違いない。勝てるはずがない。

 

一匹の名も無き蝿は殺したが、生きた心地がしなかった。

 

蝿(ハエ)の能力値が高すぎて恐怖を感じる件について

 

 

 

 

月白貉