ぼくと、むじなと、ラフカディオ。

かつて小泉八雲ことパトリック・ラフカディオ・ハーン (Patrick Lafcadio Hearn)が、自らの感覚で古き日本を歩きまわって独自の感性で見聞を広めたように、遠く故郷を離れてあてどなき夢想の旅を続けるぼくが、むじなと、そしてラフカディオと一緒に、見たり聞いたり匂ったり触ったりした、ぼくと、むじなと、ラフカディオの見聞録です。

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蜘蛛の話

きょう病院の待合室でソファーに座っていたら、足首にこそこそっと何かが這っている気配がしたので目を向けると、翡翠のような緑色をした足の長い蜘蛛が、どこから来たのか知らないけれどぼくの足首を這い回っている。

 

うわっと思ったが、あまりビビットに反応してしまうと、蜘蛛がズボンの中に逃げ込んだり、あるいは蜘蛛の攻撃フラグがたって、ぴゅぴゅっとさされてしまう恐れがあると咄嗟に判断して、口笛を吹きながらさらっと軽く手ではねのけてみた。

 

すると蜘蛛は、さらっとはねのけられて床に優雅に舞い降りたのだが、そこからなぜかぼくの方に顔を向けて、前の方の足を頭上にかかげながら威嚇するような体勢をとって動かなくなった。

 

ぱっと見ると、小さい蟹が足下にいる光景を想像していただくとわかりやすい。

 

そこからずいぶん長い時間、ぼくは足を使ったり手を使ったりして、蜘蛛をどこかに行かせようとこちらも威嚇を続けたのだが、いっこうに蜘蛛は威嚇の体勢を崩さず、どこにも逃げてゆく気配がない。

 

しばらくして、ちょっと恐くなってきた。

 

なにかものすごい攻撃の準備段階で、このチャージみたいな時間がおわってフルパワーまで充電されたら、悪鬼のごとく襲いかかってくるんじゃなかろうか。

 

その恐怖に耐えきれずに、ぼくはその小さな緑色の蜘蛛を、スニーカーで踏みつぶして殺してしまった。

 

完全に、ぼくの負けである。

 

 

 

クモ学―摩訶不思議な八本足の世界

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日本のクモ (ネイチャーガイド)

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月白貉