猫の回転
「ぼくに安息の地なんて、安住の地なんて、ほんとうにあるんだろうか?」
毎日草むらでコテンコテンと転がっている子猫と仲良くなってから数日、ぼくはその子猫に聞いてみた。
子猫はこちらに目を向けはするけれど、始終ずっとコテンコテンと転がってばかりで、なにも言いはしない。でもしばらく、そのコテンコテンと転がっている姿を見ていて思った。ぼくに安息の地があろうがなかろうが、安住の地があろうがなかろうが、そんなことはどうでもいいじゃないか。
そう思ったとたんに、子猫はすごく大きくコテンと転がってから、「にゃふ」と小さくないて、口から真っ白な雲みたいなものを吐き出して、その真っ白な雲みたいなものにしがみついて、空へとフワフワのぼっていった。
空にのぼる子猫のしっぽは、ヒンデンブルグ号のプロペラみたいにぐるぐる回っていた。
月白貉