ぼくと、むじなと、ラフカディオ。

かつて小泉八雲ことパトリック・ラフカディオ・ハーン (Patrick Lafcadio Hearn)が、自らの感覚で古き日本を歩きまわって独自の感性で見聞を広めたように、遠く故郷を離れてあてどなき夢想の旅を続けるぼくが、むじなと、そしてラフカディオと一緒に、見たり聞いたり匂ったり触ったりした、ぼくと、むじなと、ラフカディオの見聞録です。

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13人目は、北の民ではいけない -『13ウォーリアーズ』(The 13th Warrior)

このウェブログでは自由気ままな映画の話なんかを時々載せているのであるが、大抵はSF映画だったりホラー映画だったり、ジャンルが偏ってしまう傾向に有る。

 

たとえば、SF映画を細分化しての、地球外生命体映画だったり、あるいはホラー映画を細分化しての吸血鬼映画だったり悪魔映画だったり、あるいは天使映画だったり、ああ確かに偏っているなあと、改めて溜息をついてみたりする。もちろん、それがぼくの趣味なのだから仕方がないといえば仕方がない。

 

 

だからまあ時には違うジャンルのものも精力的に取り込んでゆこうなどと思い、昨日の夜、お酒を飲みながら観返していた映画の話をしてみることにする。

 

というわけで、今回の映画もやはりジャンル細分化をしてみたくなるのが世の常であって、さてどんなジャンルがいいかなあと考えてみると。

 

ベースは、まあ監督が監督ということもあってアクション映画の要素が強い作品なのであるが、歴史的な要素や、あるいはオカルトやホラー的な要素も兼ね備えている。ただメインとなって描かれているものの背景として、北欧や獣人伝説というものが色濃く存在するので、そのあたりから言うと、

 

やはり「ヴァイキング映画」とするのがいちばん妥当かと思われる。

 

では映画の話に入る前に、ヴァイキングとはなんぞやということを少しだけ話したくなってしまう。

 

ヴァイキングと聞くと、短絡的には「海賊」というようなイメージを持つ方が多いと思う。それはなぜかと考えると、例えば、

 

ぼくがまだ幼い頃にテレビアニメとして放映していた「小さなバイキングビッケ」、

 

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小さなバイキング ビッケ DVD-BOX II

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あれは完全にヴァイキングを海賊として扱っている内容であった。今でも歌えるほどのなかなかキャッチーなオープニング曲にはじまり、個性豊かなキャラクターたちが登場する楽しい物語だったので、テレビにかじりついてずいぶんよく観ていた記憶がある。つまり、ぼくの経験からすれば、子どもの頃にヴァイキング=海賊という図式が頭のなかに叩きこまれてしまっていたのである。

 

もちろん、ちょっと前までのヴァイキングの認識は、

 

西ヨーロッパ沿海部を荒らしまわっていた武装船団というものだった、まあいわゆる海賊団である。

 

ヴァイキングの世界 (図説世界文化地理大百科)

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しかし実際には、ヴァイキングは略奪行為を繰り返す海賊を生業としていたわけではなく、船を駆使した交易を主な生業とする、その地域に住んでいた人々全般を指す言葉であり、ある人は農民であり、ある人は漁民であったわけである。

 

ヴァイキングと聞くと、

 

日本人がもう一つ思い浮かべるのが例の「バイキング」という食べ放題の外食スタイルだと思う。

 

 

よくホテルに宿泊したい際にも、受付時のカウンターで、

 

「朝食はバイキング形式となっております。」

 

などという説明をされることがあるが、あれはおそらく日本人にしか通じない言葉であろう。例えばもし、日本語そのままの内容を西洋人に説明したら、「なんだなんだ、このホテルでは朝からヴァイキングの仮装をしてパーティー形式で食事でもするのか?!」となるに違いない。

 

あの食べ放題の形式が、なぜバイキングなどというヘンテコなネーミングになっているのかずいぶん長い間不思議で仕方がなかったが、さて、あれはなぜかと言えば、北欧にあるいわゆる食べ放題形式の「スモーガスボード」というものを日本に導入した折に、その言葉が日本人には馴染みが薄いことと、もうひとつは日本語では発音しにくいという理由から、

 

「じゃあ北欧料理ってことで、北欧といえばヴァイキングですから、バイキングにしちゃいましょうか、支配人!」

 

という日本人らしい曖昧で中途半端な提案が採用されて、「バイキング」とされたのだそうだ。

 

例えば、アメリカに進出した回転寿司のことを、アメリカ人が何と呼ぶかは知るところではないが、

 

「カイテンズシ、ナンダカイイニクイデスネ、デハ、ニホントイエバ、サムライデスカラ、ネーミングハ、サムライ、コレ二シマショウヨ、ボス!」

 

と言っているようなものである。

 

さて余計な話がすぎたので、そろそろ本題の映画の話に移ろうと思う。

 

というわけで今回の映画は、「13ウォーリアーズ」(The 13th Warrior)である。

 

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13ウォーリアーズ」は1999年(日本では2000年)に公開されたアメリカ映画で、マイケル・クライトンの「北人伝説」(Eaters of the Dead)を原作として製作されている。

 

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北人伝説

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監督はジョン・マクティアナン

 

彼の代表作と言えば、このウェブログでも触れたことのある地球外生命体映画の傑作「プレデター」(Predator)、そしてみなさんご存知、ナカトミビルのてんやわんやが描かれた「ダイ・ハード」(Die Hard)であろう。「レッド・オクトーバーを追え!」(The Hunt for Red October)なんかも彼だったなあ。気付けばぼくはジョン・マクティアナンの作品をずいぶん沢山、数で言えばざっと六七作品は観ていると思う。どの映画もなかなかよく出来ている、というか、あるいはぼくの好みの作品が多いということであろう。

 

 

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この映画に関して言うと、ジョン・マクティアナンは監督を途中降板しているという話もあるのだが、実際のところはよく知らない。世に出回っているゴシップのほとんどが、大抵は嘘かデマかの場合が多いのは言うまでもない。特にインターネットが発達した昨今では、そのレベルが時には常軌を逸している。嘘か真かを述べる際には、やはり最終的には自らの目で見たものでなければならないよなあと、常々思っているのである。

 

さて、映画の主役、アラブ人のアハメッド・イブン・ファラハン役を演じているのはアントニオ・バンデラス

 

デスペラード」(Desperado)でのエル・マリアッチはかっこよかったなあ。ただその後に関しては、それほど思い入れのない俳優ではある。たしか「暗殺者」(Assassins)ではシルヴェスター・スタローンと共演していた記憶がある、内容はあまり覚えていないけれど。

 

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この映画にほもうひとり、ぼくがよく見かける人物が出演している。

 

ウィロウ女王役のダイアン・ヴェノーラである。

 

彼女の出演作で個人的にいちばん印象に残っているのは、ブルース・ウィリスリチャード・ギアが共演した「ジャッカル」(The Jackal)であろう。作品中、彼女はロシア人のヴァレンチーナ・コスロヴァ少佐役を演じているのだが、なかなかの好演である。お世辞にもいわゆる美人ではないのだが、ちょっと独特のあまりアメリカ人には見えないようなインパクトの有る顔をしていて、言い方を変えるとかなりゴツいのであるが、そこがある意味では魅力的なポイントになっている。

 

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さて、この映画には多くのヴァイキング役の俳優たちが登場するのだが、

 

それぞれのキャラクターのヴィジュアルがすごく個性的で、かつヴァイキングあるあるのような、「まさにヴァイキングじゃん!」というような人々に溢れている。弓の名手がいたり、双璧をなす二人の巨人がいたり、忍者バリの隠密風特殊能力者がいたり、顔に不思議な刺青のある男がいたり、ある意味では漫画の「ワンピース」的な趣さえ感じられる。そしてそこがこの映画の大きな見所のひとつであり、観ていて本当にワクワクする。ただ作品中においては、主要メンバー以外はチラチラと映るのみで、個々の活躍はあまり描かれておらず、ちょっとだけ悲しいというか欲求不満になることは否めない。ただ何回も何回も観返していて思ったのだが、実はあのくらいのチラリズムだからこそ、その存在感が引き立っているのではないかという結論に、ぼく自身は達するにいたった。すっごい美人のグラマラスな女性が、真っ赤なパンツ丸見えで街を歩いていても、色気もクソもないのと同じことである。

 

さて、ではこの映画はいったいどんな話なのかということを、水で80倍くらいに薄めて説明すると、

 

十二人のヴァイキングと一人のアラブ人、十三人で力合わせようぜ!という物語である。

 

この映画について、内容はさておいてひとつだけ物申したいことがある。 それは映画というより日本での邦題、「13ウォーリアーズ」なのであるが、この映画の原題は「The 13th Warrior」、つまり「13番目の戦士」という意味合いだと思うのだけれど、邦題の意味合いは「13人の戦士」になってしまっている。映画を観てもらうとわかるのだけれど、これは大いに間違った邦題なのではないかと言いたいのである。映画の内容に関わることなので、このくらいあっさりに留めてはおくが、日本で公開される洋画の中には、とんでもなくひどい邦題の付いた映画だったり、あるいはまったく納得の行かない邦題の付いた映画が実に多いことに、いささかげんなりする。

 

近年、公開当時は「スター・ウォーズ/ジェダイの復讐」であった邦題が、「スター・ウォーズジェダイの帰還」に変更されたことはご存知だと思う。

 

スター・ウォーズ ジェダイの復讐 [Laser Disc]
 

 

ぼくにとっては、ずいぶんといまさら感があるのと、もう「ジェダイの復讐」で通せばいいじゃないかという気持ちがじつに強い。まあジェダイが復讐しだしちゃったら、正義も悪もどうでもよくなっちゃうよねということなのだろうけれど、もう数十年もたってからそこをなおすんだったら、この「13ウォーリアーズ」もなおせよ!ということが言いたいわけである。

 

そんなこんなで横道にフラフラしていたら、文章もだいぶ長くなってしまったので、そろそろ〆に参りたいと思う。

 

この映画でぼくが好きなシーンというわけであるが、そうだなあ、主人公の乗っている馬が、ほかのヴァイキングの乗る馬よりもずいぶん小さいことから、「お前の乗っているのは犬かっ!」といってみんなにからかわれるシーンがあるのだが、あそこがなかなか好きである。銀髪の巨人のおっさんが、主人公の馬に向かって「ワフッワフッ!」と犬の鳴きマネをする辺りなどは、何度観返してもよいシーンだなあと思ってしまって、ぼくも画面の前で「ワフッワフッワフッワフッ」言ってしまう。

 

といったわけで、なかなかの名作「ヴァイキング映画」です、未鑑賞の方は、気が向いたら観てみてね。

 

お題「何回も見た映画」

 

 

 

 

月白貉