ぼくと、むじなと、ラフカディオ。

かつて小泉八雲ことパトリック・ラフカディオ・ハーン (Patrick Lafcadio Hearn)が、自らの感覚で古き日本を歩きまわって独自の感性で見聞を広めたように、遠く故郷を離れてあてどなき夢想の旅を続けるぼくが、むじなと、そしてラフカディオと一緒に、見たり聞いたり匂ったり触ったりした、ぼくと、むじなと、ラフカディオの見聞録です。

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私は血を糧に、生きつづけてみせる! -『ドラキュラ』(Bram Stoker's Dracula)【後編】

さて、吸血鬼映画の名作、「ドラキュラ」(Bram Stoker's Dracula)の後編に移りたいと思う。

 

こんな辺鄙なウェブログなので、うっかり迷い込んでしまった前編未読の方も多いかと思うのだが、これはれっきとした後編である。

 

前編はもっぱら藤子不二雄の「怪物くん」の話がメインであるため、

 

 

まあ読まなくてもいいのだけれど、もし暇を持て余しているのであれば、前編を読むことをオススメする。なぜなら後編というものは前編ありきのものであるから、後編を読むにあたってはまず前編を読まれたほうがモア・ベター(おばちゃまに敬意を表して)、かつプリティー・グッドだと思うわけである。

 

そんなわけで、前編への道程も念のため以下に標す。

 

 

「ドラキュラ」は1992年に公開されたアメリカのホラー映画で、監督は、御大フランシス・フォード・コッポラが務めている。

 

 

コッポラのことをここであえて述べる必要もないであろうが、ぼくが印象に残るコッポラの作品といえば、やはり「地獄の黙示録」(Apocalypse Now)であろうか。たしか大学生の時分だったと記憶しているが、音響機器マニアの友だちの家に遊びに行く度に、「地獄の黙示録」ばかり観させられた覚えがある。彼は映画の内容云々ではなく、ソフトの音響寄りであったため、いつも映画の話題が食い違っていたことを懐かしく思い出す。

 

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コッポラは近年、「Virginia/ヴァージニア」(Twixt)というフランケンシュタインに関する映画も監督しているらしいが、

 

こちらはまだ未鑑賞である。ビデオレンタル店でいつもいつも気になるのだが、ジャケットを見る限りだとまったくそそられないため、箸が伸びないのである。そう考えると、如何にジャケットが重要かということが思い知らされる。

 

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さて、この映画の主演はといえば、もちろんドラキュラ伯爵役を演じているゲイリー・オールドマンである。

 

ゲイリー・オールドマンといえば、トニー・スコットの監督する「トゥルー・ロマンス」(True Romance)でのドレクセル・スパイビー役や、リュック・ベッソンの名作「レオン」(Léon)でのノーマン・スタンスフィールド役などが、ぼく個人的には印象深い。狂気を内に秘めた人物を演じさせたら、なかなか右に出るものは少ないのではないかと感じる。ただ近年の映画においては、あまり特徴の無い役柄が多いようなイメージがあり、狂気の側面を醸し出すゲイリー・オールドマンが好きなぼくとしては、若干物足りない感が否めない。

 

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さて、この「ドラキュラ」には、ゲイリー・オールドマンに引けを取らないインパクトを持つ俳優が多数出演している。

 

この映画のヒロインでミナ・マーレイとエリザベータの二役をこなすウィノナ・ライダーヴァン・ヘルシング教授と冒頭に登場する司祭のこれまた二役を演じる名優アンソニー・ホプキンス、ジョナサン・ハーカー役のキアヌ・リーブス、ドラキュラ城に巣食う花嫁役のモニカ・ベルッチ、そして極めつけはR・M・レンフィールド役を演じるトム・ウェイツである。

 

ウィノナ・ライダーに関しては、

 

ぼくは特に思い入れがないので多くの言及は控えるが、幼少期をコミューンで育ち、後見人がティモシー・リアリーだったという話は興味深い。ティモシー・リアリーに関してここで少しだけ触れたいと切に思ってしまうが、ワンハンドレッド・パーセント話が明後日の方に走りだすので、グッとこらえて涙をのむことにする。

 

アンソニー・ホプキンスにおいては、やはりジョナサン・デミの「羊たちの沈黙」(The Silence of the Lambs)におけるハンニバル・レクター役が忘れられない。

 

 

あの映画での彼の演技は実に衝撃的だった。その他にも「エレファント・マン」(The Elephant Man)や「日の名残り」(The Remains of the Day)などなど多くの名作に出演している彼は、ナイトの称号も持っている。

 

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さて、キアヌ・リーブスに関してであるが、

 

以前にも悪魔映画の「コンスタンティン」においていろいろとお話しているので、以下をお読みいただくのがプリティー・グッドであろう。お暇なら読んでね。余談ではあるが、ぼくはキアヌ・リーブスの特徴のある走り方が何気に好きでたまらない。

 

 

お次のモニカ・ベルッチ、個人的なイメージで言うと、その超越的な色気の存在感が突出してしまう。

 

この映画での役柄も、もちろんそうなのであるが、ぼく個人的なお気に入りは「ジェヴォーダンの獣」(Le Pacte des loups)での謎の娼婦シルヴィア役であろうか。ちなみに彼女はなんとイタリア語、フランス語、英語、ペルシャ語の四ヶ国語を操ることが出来るそうである、すばらしい。

 

 

さて最後に控えたトム・ウェイツ

 

彼はもちろんシンガーソングライターとして広く知られている人物であるが、役者としての映画出演もなかなか多い。特にこの「ドラキュラ」におけるレンフィールド役のインパクトは凄まじいものがある。あの非常に少ない登場シーンだけで、ドラキュラ役のゲイリー・オールドマンを食い潰す勢いだと言ってもまったく過言ではない。

 

さてでは、この「ドラキュラ」が一体どんな映画なのかということであるが、まあここで語る必要もなかろうかと思うが、念のためほんの少しだけ言うと、

 

ドラキュラ伯爵の悲しい愛のお話、何をおいても愛に尽きる物語、とだけ言っておこう。

 

ちなみに少しだけ余談にはなるが、

 

ドラキュラという名前の由来を皆さんは御存知であろうか。

 

このドラキュラというのは、前編で少し触れたように、ブラム・ストーカーが「吸血鬼ドラキュラ」を執筆するにあたりモデルとした実在の人物、ワラキア公国の君主ヴラド3世にちなんだものである。彼は「ヴラド・ドラキュラ」や「ヴラド・ツェペシュ」などという渾名で呼ばれることがあるのだが、その前者をとってドラキュラとされている。

 

では、このドラキュラというのはどういう意味なのかといえば、ヴラド3世の父であるヴラド2世が神聖ローマ帝国から竜騎士団の騎士の身分を与えられていて、その竜にちなんで「竜公」つまり「ドラクル」(Dracul)と呼ばれたことに由来している。

 

現地の言葉では語尾に「a」を付けることで、「〜の子」という意味を持つことから、ドラクルことヴラド2世の息子であるヴラド3世が、ドラクレア(Drăculea )、英語で言うところのドラキュラ(Dracula)と呼ばれたのである。またヴラド2世本人のサインにも「ヴラド・ドラキュラ」と書かれたものが存在することから、自らもすすんでそう名乗っていたのではないかと考えられている。

 

もう一方の「ヴラド・ツェペシュ」に関しては、同じく前編で少しだけ触れているが、日本語に訳すと「ヴラド串刺し公」とでも言うべきものである。

 

これはヴラド3世が、敵対するオスマン帝国軍だけでなく、自国の貴族や民も含め数多くの人々を串刺しにして処刑したことにちなんでいる。その詳細に関してはまたもや長くなりそうなので別の機会にでもお話しようと思うが、異常性を強調させた「ヴラド・ツェペシュ」という呼び名の一方で、その行為の理由を、自国を侵略から守るために戦った英雄の姿として捉え、評価する面も現在では存在する。

 

ドラキュラ伝説―吸血鬼のふるさとをたずねて (角川選書)

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とまあこんな感じで、前編後編に渡ってお話してきたコッポラの「ドラキュラ」であるが、最後にぼくがこの映画での好きなシーンを上げて〆とさせていただこう。

 

そうだなあ、やはり前述したトム・ウェイツが演じるレンフィールドのシーンが、何度見ても好きだなあ。あのシーンで登場してくる監獄風な精神病棟の看守が、正方形の小さな牢獄のようなヘルメットを装備している辺りも、なかなか雰囲気があっておもしろい。あれはおそらく史実に基づくデザインなのだと思うのだけれど、なんという名前のものなのだろうかと、いつ観返しても気になってしまう。

 

まあそんなわけで、「ドラキュラ」はなかなかの名作ですよ、たぶん軽く三十回は観返しているかな。

 

お題「何回も見た映画」

 

 

 

 

 

月白貉