ぼくと、むじなと、ラフカディオ。

かつて小泉八雲ことパトリック・ラフカディオ・ハーン (Patrick Lafcadio Hearn)が、自らの感覚で古き日本を歩きまわって独自の感性で見聞を広めたように、遠く故郷を離れてあてどなき夢想の旅を続けるぼくが、むじなと、そしてラフカディオと一緒に、見たり聞いたり匂ったり触ったりした、ぼくと、むじなと、ラフカディオの見聞録です。

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おれが持っている聖書では、天使は人の味方だ -『レギオン』(Legion)

「神」とは、いったい何者なのだろうか。

 

ぼくは基本的には常用の信仰としての宗教を持っていないので、無宗教者あるいは無信仰者ということになるだろう。

 

だから神というものに関しては、正直に言うと安易な「神頼み」的な、道すがら、ちょっと目にとまった神社にお参りに行ってお願いしておけば気分的に楽になるだろう、というような意味合いで考えているケースが非常に多いことは否めない。

 

ただ、長く住んだ土地においては、自分のインスピレーションに頼って神社を見極め、ここだと思う場所には毎週のように、あるいはことあるごとにお参りに足を運ぶというようなことはしていた。もちろん氏子のように形式張ったものではないが、ある意味では信仰していたと言ってもよいと思う。

 

日本には「流行り神」という言葉があるくらいなので、

 

近年においては、世界的に見る絶対的な信仰としての宗教あるいは神というのものとは、ちょっとかけ離れた宗教観、あるいは精神論に依っているのではないかと感じる。もちろん昔は、たとえば自然崇拝的なものが基礎になっていたはずであるから、他の国々と同様に日本に関しても今とはずいぶん違っていただろうが、近年に関して言えば、日本におけるそういった流行り廃りの一時的な信仰対象を持つ傾向は強まっているのではないだろうか。

 

例えば日本で言う宗教といえば神道とか仏教とかがメインだとは思う。

 

もちろん、その他の宗教を持っている人も多くいるだろうが。ただ、日本人が言うところの、「うちは仏教ですよ。」という言葉の意味は、結局のところ、もはや信仰としての宗教ではなくなっている。おそらくは身内が死んだら仏教に準えた儀式をしていますよ、という、単にそれだけのことである。そこに信仰はないのだ。

 

だから葬式には坊主を呼ぶけれども、結婚式は神社でやったり、キリスト教会でやったりしちゃう。

 

それってゴチャ混ぜだよねと思う。なんだったら結婚式は教会からの神社などという二段階式のわけの分からないことをしている人も当たり前にいたりする。おそらくはキリスト教徒でもないし、厳密には神道の信者でもないのだろうから、何やってんだろうかと思う。

 

ぼくはもちろん宗教に関しての知識はまったく持ち合わせていないので、宗教やら信仰やらのことに関して深く言及することはできないし、大いに間違った認識を持っているかもしれない。でも例えば、いわゆるイスラム教とかヒンズー教とか、あるいはキリスト教とか、もちろん仏教もだけれど、世界的に見れば宗教を信仰として持って生きている人々の方が圧倒的に多いだろう。でも日本人の多くが持っている「自分の宗教」の意識は、けっきょく信仰としての宗教ではなくて、ブランドみたいなものになってやしないかということである。

 

さて、映画の話をしようと思っているのだが、

 

このウェブログでも何度か触れてきた映画細分化ジャンルの「悪魔映画」というものがある。

 

この「悪魔」とはいわゆる宗教内における悪しき存在、単にチョイ悪いだけではなく超越的な悪の存在が悪魔と呼ばれているわけであるが、ぼくがいくつか言及した「悪魔映画」に関しては、アメリカ映画ということもあり、キリスト教における悪魔定義の悪魔が描かれているものであった。

 

 

では、キリスト教における悪魔とはなんぞやということであるが、

 

これは簡単に言ってしまうと、神に敵対する存在である。

 

もうちょっとだけ細かく言うと、神に対して謀反を起こして堕落した天使、いわゆる堕天使の長である「サタン」の手先たちのことを悪魔と呼ぶ。ご存知のように、このサタンとはもともとはルシファーという天使であった。それも天使たちの中でもトップクラスの大天使だったのであるが、ある時、創造主である神に反旗を翻したのである。

 

ちなみにルシファーがいかなる理由で神に背き、そして堕天使になったのかということについては諸説あるので、ここでは多くは語らないことにする、長くなるからね。ただぼくの認識では悪魔とはルシファーだけを指すものではなく、ルシファーを筆頭とする堕天使集団のことであり、悪魔と呼ばれている存在は、もともとはみな天使なのである。神学や聖書学にも詳しくないので間違っているかもしれないけれど、おおよそはそういうことであろう。

 

そんなわけで、今回は悪魔映画ならぬ「天使映画」をチョイスしてみる。

 

ただ天使映画と言っても、大枠ジャンルとしてはもちろんホラー映画内の天使映画であることは、もちろん言うまでもないので、ご安心いただきたい。

 

というわけで、今回の天使映画は「レギオン」(Legion)である。

 

 

「レギオン」は2010年に公開されたアメリカのホラー映画で、世間の評判はもっぱら悪いようであるが、なかなか見どころの多い名作である、ちなみにぼくは六回は観返している。

 

少しだけ余談になるが、結局のところ映画は一度観たくらいでは、なかなかその良さは計り知れない。もちろん超絶クソつまらない映画は別で、場合によっては途中で嘔吐してしまうこともあるが、一度でも最後まで観通すことが出来た初見駄作だなあくらいの映画であれば、何度か観返すことをオススメする。 

 

ちなみに、超絶クソ映画ではなく、反対にとんでもない名作なのだけれど、何故か途中で観るのを挫折してしまうというケースがある。映画が好きな方はこの壁にぶち当たったことが必ずあるはずである。この場合は、けっして作品がひどいのではなくて、自分の力量がその映画を鑑賞するところまで至ってない結果だということで、もっというと年齢的なことも少なからず関わってくる、もっともっと精進して歳を重ねて、何度も何度もその映画にぶち当たらねばならない。その先に楽園があることは、間違いはない。ぼくが身を持って経験したことである。

 

さて話を戻そう。

 

この映画を監督しているのはスコット・スチュワート、手がけた作品数こそ少ないが、ぼくは彼の監督した数少ない作品のひとつを所蔵している。

 

「プリースト」(Priest)という吸血鬼映画である。

 

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この「プリースト」もさして特筆するほどでもない映画ではあるのだが、「レギオン」同様に何度か鑑賞している、持ってるからね。

 

さてこの「レギオン」の主演を務めるのは、 

 

天使ミカエル役を演じるイギリス人俳優ポール・ベタニー

 

彼は前述の「プリースト」でも主役を張っていて、他にも出演作は多いのだが、ぼくはあまりお目にかかったことがないので、この程度しか触れることが出来ない。

 

ということで、この映画で注目の俳優をぼく個人的な視点から述べさせてもらうと、

 

まずはジープ・ハンソン役のルーカス・ブラックである。

 

彼はかの名作「スリング・ブレイド」(Sling Blade)で、ビリー・ボブ・ソーントンが演じるカール・チルダースと親交を深める少年、フランク・ウィートリー役で出演している。あの頃は本当に少年だったのに、なんとも大きくなったものだ(まあ、あたりまえだけれどね)。あの映画のカール・チルダースのモノマネを、ぼくは今でも時々こっそりやるほど、あの映画は大好きで、心に焼き付いている。

 

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そしてやはりこの人に触れねばなるまい。

 

パーシー・ウォーカー役のチャールズ・S・ダットンである。

 

彼の代表作といえば、スパイク・リーの「ゲット・オン・ザ・バス」(Get on the Bus)での運転手ジョージ役だろうなあ。その他にも、いずれこのウェブログでも取り上げねばならない地球外生命体映画、「エイリアン3」(Alien³)のディロン役、あの黒縁メガネ姿はカッコ良かった。他にも「ミミック」での警察官レナード役や、ノンクレジットではあるがデヴィッド・フィンチャー「セブン」にも出演している。ぼくのお気に入りの俳優のひとりである。

 

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そしてもうひとり、

 

やはりボブ・ハンソン役のデニス・クエイドにも触れておこう。

 

ぼく個人的には正直に言うと、特に彼にはあまり思い入れはないのだが、まあ有名な俳優であることに間違いはないし、意外と出演作品を観ているなあと、テンション低めにお伝えしてみる。一番の印象は、そうだなあ「デイ・アフター・トゥモロー」かなあ。その程度の興味しかないけれど、やはりこの映画の中ではベテランらしい存在感はおおいに光っている。

 

 

では、この「レギオン」ってどんな映画なのよってことを、たっぷり薄めてご説明すると、

 

神様が人間見捨てちゃったけど、もうちょっと踏ん張ってみようか、という話である。

 

このタイトルにもなっている「レギオン」(Legion)とはどういった意味の言葉かというと。もともとはラテン語で「選ばれた者」という意味の言葉を語源としていて、古代ローマにおけるある決められた規模以上の軍団のことを指し示すものである。それが転じて、単に軍団とか軍隊とか大規模な武装集団、あるいは大勢などという意味で使われている。

 

この映画で言うならば、おそらくは神が率いる「天使」部隊のことを指しているのではないかと思われる。

 

さて、映画の本筋の内容とはちょっと離れた話になるが、この映画を何度か観ていて気付いたことがある。それは、この映画がとあるSF映画に大いに影響を受けて作られているのではないかという点である。それは何かと言えば、

 

SF映画の名作、ジェームズ・キャメロンの「ターミネーター」である。

 

 

もちろん内容とか云々ではなく(まあ厳密に言うと内容も絡まってくるが)、細かなシーンあるいはシチュエーションの描写において、明らかに「ターミネーター」の中に出てくるシーンそっくりに作ってある箇所がいくつも存在する。ここでは未鑑賞の方のためにその詳細を言及することは差し控えるが、

 

例えばあのシーンのあの瞬間に金網の向こうで犬がワンワン吠えてるのは、あれ「ターミネーター」のあのシーンとそっくりだよね、とかいう部分が、けっこうたくさん出てくるのである。もしどこかの街角のモニターで流されている「レギオン」のそんな該当箇所をたまたま見かけたら、「ターミネーター」が流れてるじゃん、と思うほどそっくりなシーンもある。もし興味がある方は、テレビを二台並べて鑑賞してみることを強くオススメする。

 

さて、ずいぶん長くなってきたので、そろそろ〆に入ろうと思う。

 

ぼくがこの映画で好きなシーンであるが、そうだなあ、圧倒的に好きなシーンが二つあるのだけれど、やっぱり、ステーキの焼き加減が「ブラッディ・レア」のグラディス・フォスターと名乗るおばあちゃんのシーンに限るかな。はじめて観たときのあのシーンの衝撃度は凄まじかった。

 

ちなみにもう一つの候補は、もちろんアイスクリーム屋さんですよ。

 

とまあ、そんなわけで、天使も悪魔も表裏一体、さして変わりはしないよねという映画で、なかなかおもしろいですよ。

 

お題「何回も見た映画」

 

 

 

 

月白貉