ぼくと、むじなと、ラフカディオ。

かつて小泉八雲ことパトリック・ラフカディオ・ハーン (Patrick Lafcadio Hearn)が、自らの感覚で古き日本を歩きまわって独自の感性で見聞を広めたように、遠く故郷を離れてあてどなき夢想の旅を続けるぼくが、むじなと、そしてラフカディオと一緒に、見たり聞いたり匂ったり触ったりした、ぼくと、むじなと、ラフカディオの見聞録です。

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死ぬわ、両方に噛まれたらね -『アンダーワールド』(Underworld)

ぼくの所蔵映画ソフトの中には、「はて、何でこんな映画持ってるんだっけな?」というものがわりにある。

 

基本的にはまだ観たことのない映画のソフトは買わない主義であるとは、わりかし思っている。ただ度を越して観たくて観たくて仕方がないものに関してはまれに未鑑賞でもソフトを買ってしまうことはあるが。

 

それ以外にもなんだか中途半端なものをけっこう持っているなあということに、時々気が付く自分がいる。

 

今回はそんな、あまりおもしろくない映画だけど、ソフト持ってるし、なおかつ意外と何度も観ているなあというものを取り上げたい。細分化ジャンルでいうと「吸血鬼映画」に分類されるものである。今思うと、吸血鬼映画に目がないぼくは、たぶんジャンル買いしたんじゃないのかなあということが思い当たる。

 

ジャケットのデザインが気に入った為に、内容はさて置き音楽CDなどをつい買ってしまうという例の「ジャケ買い」と同じ現象である。

 

この場合には、言うなれば「ジャン買い」であろう。

 

あ〜なるほど、だからぼくの所蔵映画には吸血鬼映画がいっぱいあるのかと、改めて気が付いた今日この頃であるが。

 

そんなわけで、今回の吸血鬼映画は「アンダーワールド」(Underworld)である。

 

 

アンダーワールド」は2003年に公開されたアメリカのホラー映画で(アクション映画に分類されていたりするけれど、吸血鬼が題材になっている時点でホラー映画だろうと、ぼく個人は思う)、

 

監督はこの映画が初監督作品となるレン・ワイズマンが務めている。

 

彼はダイ・ハードの四作目となる「ダイ・ハード4.0」(Live Free or Die Hard)や近年製作されたリメイクの方の「トータル・リコール」(Total Recall)などを監督しているが、ぼくはどちらも未鑑賞である。ぼくの観たことのある彼の作品はこの「アンダーワールド」のみである。

 

 

そして前述したように、お世辞にもおもしろいとは言えない映画である。

 

この「アンダーワールド」はけっこうヒットしたらしく次々に続編が製作され、第一作目を含めると全四作品の壮大な物語となっている。残念ながらぼくはまだ第一作目しか観ていない、つまらなかったからであることは言うまでもない。ただ、第一作目は所蔵しているということもあるかもしれないが四回か五回は鑑賞している。でもやはり観終わると、あんまりおもしろくないなあという感想に行き着いてしまう映画である。

 

さてでは、この映画の内容をあっさり醤油ひと垂らし的に説明すると、

 

吸血鬼と狼男、ずいぶん前からけっこう仲悪いよね、という話である。

 

吸血鬼と狼男のいざこざは、ご存知のようにずい分前から多くの物語で語られてきているが、そのベースになったものとは一体何なのだろうかと考えてみる。ぼくの知るかぎりであると、狼は吸血鬼の眷属のようなものではなかっただろうかという認識がある。

 

映画に関して言うならば、例えばブラム・ストーカーの「吸血鬼ドラキュラ」(Dracula)を原作にして製作されたフランシス・フォード・コッポラの「ドラキュラ」(Dracula)においても狼が描かれているシーンが登場するし、このブログでも言及した「フライトナイト」(Fright Night)においても狼が登場している。

 

 

もちろん前者だけでなく後者の映画においてもブラム・ストーカーの物語をベースに描かれているので、小説「吸血鬼ドラキュラ」の中では吸血鬼と狼は決して対立した関係ではないのである、もちろん吸血鬼のほうが上位の立場ではあるだろうが。しかし登場するのはあくまで狼であって、狼男ではない。ただ一部、吸血鬼自体が狼男的なものに容姿を変化させるシーンがどちらの映画にも描かれている。

 

 

  

ということは、もともとは同一の存在に近いものが分裂したことによって起きている抗争なのだろうか。ちなみにこの「アンダーワールド」においての吸血鬼と狼男の関係性はここではあえて詳しくは言及しないが、少しだけ触れると、かつては主従関係にあった種族のような表現がなされている。

 

では狼男とはなんぞやという話になるのだが、手元にまったく資料がないためぼくの知る限りの事柄のみを述べるのだが、

 

東ヨーロッパ辺りを起源とした獣人伝説に端を発するものではなかったであろうかと思う。その後、時代によっては何かの病気のような扱いを受けていることもあったような気がする。

 

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今回は狼男概論ではないので、この辺りにとどめておくが、吸血鬼の伝承とも一部かぶるような趣があることを考えると、何かしら同一の吸血あるいは血液感染系の伝承から分岐したものが吸血鬼と狼男なのかもしれない。

 

さて映画の話に戻ろう。

 

この映画で主役のセリーンという吸血鬼役を演じるケイト・ベッキンセイル、ぼくは彼女の他の出演作をまったく観たことがないので多くは語れないのだが、どうやらこの映画の出演をきっかけに監督であるレン・ワイズマンと結婚したようである。

 

ただこの映画の撮影中には、同作品において吸血鬼の対抗勢力である狼男のリーダー、ルシアン役を演じるマイケル・シーンと交際していたようだ。しかし映画出演の数カ月後に二人は関係を解消してしまい、ケイト・ベッキンセイルは監督と結婚してしまう。どんな事情があったのかは定かではないが、あるいは監督に取られちゃったのだろうか・・・もしそうであれば、吸血鬼と狼男の物語の裏には、隠された悲しい物語があったのかもしれないなあ、切ねえ。

 

まあ彼女に関してのプライベートは正直どうでもよいのだが、ぼくがこの映画の中でケイト・ベッキンセイルに関してダメだなあと、この映画がおもしろくない理由のひとつはそこだなあと、そう思う点をひとつだけ述べさせてもらうと、

 

吸血鬼役の、なおかつ主演でもある彼女にまったく色気を感じない点である。

 

映画全編においてほぼずっと、ピッチピチのキャットスーツを身に着けているにも関わらず、彼女がまったくエロくもなんともないところが、この映画の致命的な点だとぼくは思うわけである。なんでそこまで色気を感じないのかといえば、たぶん彼女の演技というか所作に問題があるのではないかと思う、例えば全速力で走って逃げているシーンのバックショットひとつとってもなんだかモタモタモタモタと鈍くさくて観ていられないのである。

 

でも、もちろんそれは総じて言えば監督にも大いに責任のあることは言うまでもない。なんだったら撮影中に彼女のことを好きになってしまったのだろうから、もうちょっと彼女の魅力や色気を引き立たせた演出をしなければいけないであろう、それが監督の役目である。観客に彼女がいやらしい目で見られたら嫌だなあと思っちゃって、トチ狂ってあえて色気を封じちゃったのであろうか・・・。

 

さて、そんなわけで、あまりおもしろくもないなどと言いながら、四回も五回も観ているこの「アンダーワールド」、最後に好きな部分を少しだけお話したい。

 

それはやはり、この映画の中に登場する不死者三長老のひとり、ビル・ナイが演じるビクターであろうなあ、彼はなかなかどうして吸血鬼らしくてカッコよい。それを観るためだけに何度もこの映画を観ているんじゃないのかと思うくらいである。

 

ちなみにこの映画は、作品全体の雰囲気を強めるためにキャストのすべてにイギリス人俳優を起用しているらしい。たしか「ロード・オブ・ザ・リング」(The Lord of the Rings)シリーズもほとんどがイギリス人俳優だったような気がするので、あるいはその真似っ子かも知れないが。

 

 

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そしてもうひとつ、先ほど主演のケイト・ベッキンセイルの色気が足りないという話をしたが、不死者三長老のひとりとしてちょっとだけ登場する、アメリア卿役を演じているジータ・ゴロックも、この映画内ではビクターと並んでなかなかよい、あのシーンは好きである。色気もきちんと醸し出しているしね。

 

まあそんなわけで、つまらない映画も観ようによっては、わりといろいろよい部分はあるね、といった感じでお開きとさせていただこう。

 

もっと致命的にひどい映画は、たくさんあるから・・・。

 

お題「何回も見た映画」

 

 

 

 

月白貉