ヴァンパイアにはしばらくお休みしてもらいます -『フライトナイト』(Fright Night)
隣人がもしかしたら吸血鬼なのでは!?
そんな風に感じた経験のある方は多いと思う(そんなことねえよ!という貴重なご意見はまた機会を改めて受け付けます)。
もちろん、ぼく自身が常にそういった危機感に晒されていることは言うまでもない。
ただ残念ながら実際に隣人が吸血鬼であったこと、あるいは吸血鬼だと明白に証明されたことはないが、隣人が犯罪者で、ぼくの家に泥棒に入られたことは一度だけある。現実問題として、そちらの方が瞬間的には大いに恐ろしかった。しかも単なる泥棒だけで終わっていなかったのが質が悪かった。その詳細についてはここでは触れないが、いま思い返しても極悪極まりない犯罪であった。
ここだけの話だけれど、ヘタしたらぼくは殺されていたかもしれない。
すぐに察知したぼくは近所の交番に駆け込んで事情を話したのだがまったく相手にされず、追い返された。あの時ほど警察が信じられなかったことはない。国家権力の犬どもだなあと、そう感じた。
現場で起きている事件を現場の警官が無視するとはなんぞや!という、「踊る大捜査線」を遥かに越す理不尽さに、青島以上に絶叫したことが今でも懐かしく思い出される。
踊る大捜査線 THE MOVIE 3 カエル急便おまとめパック 【初回限定生産】 [Blu-ray]
- 出版社/メーカー: ポニーキャニオン
- 発売日: 2011/02/02
- メディア: Blu-ray
- 購入: 1人 クリック: 33回
- この商品を含むブログ (17件) を見る
実際にはぼく自身が機転を利かせて必死になって動きまわり、犯人を特定して間接的に捕まえることに成功し事なきを得たのだが、事件として扱われることはなかった。「ワシが刑事か!?」という状況であった。
さて、冒頭から話がそれがちであるが、今回はついに映画細分化ジャンルの王道「吸血鬼映画」に突入するべくこの文章をしたためている。
吸血鬼映画はまさに星の数ほどある、いや実際には星の数ほどはないけれど、たくさんあるでしょ。ぼくの所蔵する吸血鬼映画もそこそこな数はある。そんな中で一体どれから取り上げようかと悩むのもバカバカしいので、例のダンボールの中の比較的上部に積まれているものを選ぶことにしたのだが、それこそまさに吸血鬼映画の名作であったのだ。
なぜ隣人の話に触れたかといえば、今回の吸血鬼映画は細々分化するならば、「隣人吸血鬼映画」、あるいは「隣人が吸血鬼映画」にあたるからである。これはいわゆる「恋人がサンタクロース」にも通ずる所のある重要ジャンルであることは言うまでもない。
というわけで、今回の吸血鬼映画は隣人吸血鬼映画の名作「フライトナイト」(Fright Night)である。
「フライトナイト」は1985年に公開されたアメリカのホラー映画で(コメディ・ホラーと言われることもあるが、いやいや純然たるホラー映画ですよ)、ぼくが幼い頃から愛してやまないホラー映画のひとつである。
監督を務めるのはトム・ホランド、彼の代表作といえば同じくホラー映画の名作、ご存知「チャイルド・プレイ」(Child's Play)をおいて他ならない。
残念ながらその後、目立った頭角を現すことはなかったように思われるが、それでも人生のうちで誰かの(まあここではぼくですが)心をつかむ映画を二本も作り上げるなんて素晴らしいことだと思うわけである。
チャイルド?プレイ37.5センチメートルグッドガイチャッキー人形のサウンドと Child's Play 37.5 cm Good Guy Chucky Doll with Sound
- 出版社/メーカー: メズコ
- メディア: おもちゃ&ホビー
- この商品を含むブログを見る
さて、この映画で注目すべき俳優は、ぼく個人的な見解から二人に絞られる。残念ながら主演を演じるウィリアム・ラグズデールではなく、ならびに裏の主演である吸血鬼を演じるクリス・サランドンでもない。
では誰かと言うのは野暮な話で、もう一人の主役がいるのをお忘れではなかろう。
まず一人目はもちろんその人、この映画の中で最重要とも言える役割を担うピーター・ヴィンセント役のロディ・マクドウォールである。
ピーター・ヴィンセントという役名は、あるいはピーター・カッシングへのオマージュであるのではなかろうかとずい分前から密かに思っているのであるが、それはさておき。彼の代表作といえばやはり「猿の惑星」(Planet of the Apes)シリーズのコーネリアス博士役に尽きるであろう。もちろんチンパンジーの役なので素顔ではなく特殊メイクを施しての登場であるが、シリーズ全5作品中じつに4作品に出演し、なおかつコーネリアスの息子であるシーザー役も演じている。
猿の惑星 コンプリート・ブルーレイBOX (初回生産限定) [Blu-ray]
- 出版社/メーカー: 20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン
- 発売日: 2011/09/21
- メディア: Blu-ray
- クリック: 15回
- この商品を含むブログ (19件) を見る
ネカ 猿の惑星 7インチアクションフィギュア クラシックシリーズ1 コーネリアス / NECA PLANET OF THE APES CORNELIUS
- 出版社/メーカー: NECA
- メディア: おもちゃ&ホビー
- この商品を含むブログを見る
もうひとつ、彼の出演作で思い出深いものといえば、ガイ・ハミルトンの監督した「地中海殺人事件」(Evil Under the Sun)であろう。
この映画の中で彼は伝記作家役のレックス・ブルースターという役を演じている。この作品はもちろん皆さんご存知、ミステリーの女王アガサ・クリスティーの「エルキュール・ポワロ」シリーズにおける小説「白昼の悪魔」(Evil Under the Sun)を原作としている。ちなみに原作では彼の演じるレックス・ブルースターは、エミリー・ブルースターという女性として登場する。さて正直言って、この映画においてはロディ・マクドウォールというよりも、名探偵ポワロ役を演じているピーター・ユスティノフに対する思い入れのほうが当然強いわけであるが、ポワロやらピーター・ユスティノフに言及しているとまたもや話が脱線してゆくので、ここでは差し控えさせていただく。
さらにロディ・マクドウォールは俳優だけではなく写真家という側面を持っており、おそらくはそれが抜擢の理由だったとは思うのだが、かのアメリカの刑事ドラマとして名高い「刑事コロンボ」(Columbo)において、第一シーズンの第6話「死の方程式」(Short Fuse)にゲスト出演している。演じたのはロジャー・スタンフォードというカメラマニアの殺人犯の役柄である。
刑事コロンボ コンプリート ブルーレイBOX [Blu-ray]
- 出版社/メーカー: ジェネオン・ユニバーサル
- 発売日: 2011/12/02
- メディア: Blu-ray
- 購入: 2人 クリック: 28回
- この商品を含むブログ (18件) を見る
さて、もうひとりの注目すべき俳優であるが、この映画内での役柄としては、ほんとうにチョイ役ではあるが。
主人公のチャーリーが隣人のことについて相談するレノックス刑事役を演じるアート・J・エヴァンスである。
彼は映画だけではなく、「天才少年ドギー・ハウザー」(Doogie Howser)や「Xファイル」(X-File)などをはじめとするアメリカのテレビドラマにも多く出演を果たしているが、
Doogie Howser MD: Season One [DVD] [Import]
- 出版社/メーカー: Starz / Anchor Bay
- 発売日: 2005/03/22
- メディア: DVD
- クリック: 5回
- この商品を含むブログ (1件) を見る
X-ファイル コレクターズブルーレイBOX(57枚組)(初回生産限定) [Blu-ray]
- 出版社/メーカー: 20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン
- 発売日: 2016/03/11
- メディア: Blu-ray
- この商品を含むブログを見る
何と言ってもぼくの中での思い出深い映画といえば、レニー・ハーリンが監督したアクション映画の名作「ダイ・ハード2」であろう。彼はこの映画の中で、ダレス国際空港のチーフ・エンジニアであるレスリー・バーンズ役を演じており、なかなか重要な登場人物として強く印象に残っている。
ダイ・ハード (日本語吹替完全版) (コレクターズ・ブルーレイBOX) [Blu-ray]
- 出版社/メーカー: 20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン
- 発売日: 2013/07/03
- メディア: Blu-ray
- クリック: 2回
- この商品を含むブログ (10件) を見る
この他にも「フライトナイト」には特徴的な俳優が多く出演している、例えば主人公チャーリーの友だちで、いつもやけに「ケラケラケラ」と腹立つ笑い声を上げているエド・トンプソン役のスティーヴン・ジョフリーズなどはその最たるものだが、俳優の話がめっぽう長くなってしまったので、このへんで。
さてでは、この「フライトナイト」という映画の内容をぶ厚いベールに隠しつつこっそりお教えすると、まあ冒頭でも少しお話してしまったが、
隣の家に引っ越してきたの、吸血鬼じゃねえ!?という話である。
この映画はよくB級ホラー映画とか、コメディ・ホラー映画とか言われることが多いのだが、ぼくにしてみたらA級の隣人吸血鬼映画にほかならない。ちなみに全編を通して吸血鬼の決まり事、つまり吸血鬼を物語る際のルールのようなものがバランスよく描かれていて観ていてなかなか気持ちがよい。例えば、吸血鬼はその家主に招かれないかぎり、決してその家に足を踏み入れることが出来ないとか、ご存知のアレである。
そしてこれは当然といえば当然のことだが、ブラム・ストーカーの「吸血鬼ドラキュラ」(Dracula)の影響が色濃く見られる。
影響と言うよりは、多くの吸血鬼映画がそうであるように、やはりブラム・ストーカーの原作の力強さへのオマージュなのであろう。もちろん描かれているのはゴシックな吸血鬼ではないが、「吸血鬼ドラキュラ」の持つ重厚な物語を比較的軽量化して非常にうまく物語全編に溶かしこんでいる辺りなどはとても好感が持てる映画である。
- 作者: ブラムストーカー,Bram Stoker,新妻昭彦,丹治愛
- 出版社/メーカー: 水声社
- 発売日: 2000/04
- メディア: 単行本
- 購入: 1人 クリック: 72回
- この商品を含むブログ (15件) を見る
まあそんなわけで、そろそろお別れのコーナー、ぼくがこの映画で好きなシーンの話であるが、
そうだなあ、やはりピーター・ヴィンセントが活躍するシーンがおもしろいのであるが、あえて今回は違うシーンを。
主人公のチャーリーとその恋人のエイミーが、吸血鬼に追われてとあるディスコのような場所に逃げ込むシーンがあるのだが、ディスコ内でエイミーが吸血鬼にあっさり捕まってしまう。そこへディスコの店員、おそらくは治安維持要員のボディーガードだと思われる、店名のロゴが入った黄色いタンクトップを身につけたゴリゴリマッチョでスキンヘッドの黒人が二人も助けに入るのだが・・・。そのあとはまあ、言うまでもないであろう。そういうシーンって80年代のアメリカ映画によく見られる表現で、観ていて何となく安心感があっておもしろい。
あ〜きたきた、ボディーガード出てきたよって、なんだかニヤリとしてしまう。そういったことも映画の醍醐味だったりしますね。
といった具合で、次回の吸血鬼映画に続く。
月白貉