ぼくと、むじなと、ラフカディオ。

かつて小泉八雲ことパトリック・ラフカディオ・ハーン (Patrick Lafcadio Hearn)が、自らの感覚で古き日本を歩きまわって独自の感性で見聞を広めたように、遠く故郷を離れてあてどなき夢想の旅を続けるぼくが、むじなと、そしてラフカディオと一緒に、見たり聞いたり匂ったり触ったりした、ぼくと、むじなと、ラフカディオの見聞録です。

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サンタクロース・フレイバー

もうずいぶん前の話になるけれど、大阪に住む伯母が亡くなった。

 

伯母はぼくの父の姉にあたる人物で、大阪の大きな病院で総婦長を務めていた。伯母は頭がよく努力家で、お酒が大好きで、そしてとてもやさしい人だった。

 

毎年クリスマスの日になると、伯母からぼくと妹に宛てて、赤くて大きな封筒が送られてきた。中には分厚いオールドファッションなチョコレートと、クリスマスの由来を綴った小さな絵本が入っていた。そして封筒の裏にはひとこと、

 

『大阪のサンタクロースより』

 

とだけ書いてあった。

 

そのクリスマスプレゼントはぼくと妹がまだクリスマスなんてものを理解できない頃からずっと贈られ続けた。そしてぼくは毎年決まってクリスマスの日に、その巨大なチョコレートを一生懸命バリバリと食べ、素朴なタッチで描かれた小さな絵本をパラパラとめくった。

 

子供のいなかった伯母がぼくと妹に注いだ愛情がいつの日も変わることがなかったように、いつの年にもそのチョコレートの味と絵本に綴られた物語は変わることがなかった。

 

伯母がいなくなったことを実感したのは、クリスマスの日にその封筒が届いていないことに気付いた時。そういえばチョコレートが送られてこなくなってからは、クリスマスの夜にあんな巨大なチョコレートをバリバリボリボリと食べることもなくなったなぁ。

 

もう大阪のサンタクロースから贈り物が届かないと思うと、何だかとても悲しくなるこの時期なのでした。

 

お題「サンタさん、これください」

 

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月白貉