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ぼくと、むじなと、ラフカディオ。

かつて小泉八雲が自らの感覚で日本を歩きまわって見聞を広めたように、故郷を離れて旅を続けるぼくが、ぼくの感覚でその土地を歩き回って、見たり聞いたり嗅いだり触ったりした、ぼくの見聞録です。

スッポンタケ(Phallus impudicus)- 松江城マッシュルームマップ

ぼくはいままでの長い人生の中で、「スッポン」というものを一度も食べたことがない。

 

スッポン自体は子どもの頃から近所の池や川などで目撃したことは数知れないが、食材としてお目にかかったことは残念ながら皆無である。

 

スッポンといえば高級食材としても有名で、スッポン料理をメインとする高級料亭のコースなどをテレビのグルメ番組で何度か見たことがある。生きたスッポンから抜いた生き血を酒で割った食前酒が出てきたり、スッポンざく切りの鍋が出てきたりするアレである。

 

まあ容姿を見るとそれほど食べてみたくなるようなものではないが、ものの噂によればずいぶんと美味であるかとかないとか。そう言われると食べてみたくなるのが人間の性である。

 

というわけで、今回のハンティングきのこは「スッポンタケ」である。

 

スッポンタケ(Phallus impudicus)- 松江城マッシュルームマップ

 

スッポンタケ科スッポンタケ属のきのこで、学名を「Phallus impudicus」、漢字で書くと「鼈茸」である。

 

幼菌はいびつな卵のような形をしていて中身はゼリー状であるが、成熟するとその殻を破ってグレバを頭にかかげた御大が登場する。この容姿を見て「おや?」と思われる方もおられるであろうし、語学に堪能な方はその学名を見ていただければ一目瞭然であるが。

 

古くからこのきのこは「男根」の名を持つものとして存在するのである。

 

そもそも歴史をたどると、男性器および女性器というものは古代から多くのモチーフに使われてきたものである。世界各地には性器をかたどった巨大なオブジェが多く存在するし、日本でも子宝を授かるために手彫の男根を神社に奉納する習慣がいまでも残っている。であるからして、この容姿を持つスッポンタケにその名が付けられても少しもおかしくはないのである。和名に関しても何やら隠語めいてはいるが、おそらく男性器のことであろう。

 

それらの形はそもそもは神聖な豊穣のシンボルとして扱われてきたのであるが、近代では、性器がまず卑猥物の代表としてしか取り上げられなくなってしまっている。

 

それはやはり人々の意識の退化にほかならないと感じざるを得ない。

 

文明が日に日に進化する昨今であるが、かつて人間が持ちあわせてきた崇高な精神は、ある分岐点に置き去りにしてきてしまったのであろう。悲しいことである。

 

さて、このスッポンタケ、ご存知のように悪臭のグレバを冠としている。

 

写真を撮影している間も、「オエっ!」と嘔吐いてしまうような臭気を放っている。

 

悪臭グレバに関しては、悪臭グレバ代表選手のひとりである以下「カニノツメ」の記事に詳しいので参考にしていただきたい。

 

 

そんな悪臭のきのこなんて絶対に食べられないと思われるかもしれないが、このスッポンタケは食用にすることが可能である。このスッポンタケの近種で「キヌガサタケ」というほぼ同型のきのこが存在するが、

 

ご存知のようにキヌガサタケは中華料理においての高級食材である。

 

この頭についた黒色の悪臭物をきれいに洗いとることで高級な食材として珍重されるものとなる、あくまでチン長ではない(下品で失礼)。

 

しかし残念ながら、この時のぼくには、スッポンタケを家に持ち帰って、そのグレバを洗い落として食べてみる勇気は持ち得なかった。それほどの悪臭なのである。しかし、いずれチャレンジする日はやってくるであろう。

 

さて、食材としてのスッポンタケの話は置いておいて、もう一つの食材であるスッポンの話に少しだけ戻ろう。

 

いろいろ調べてみると、スッポンはわざわざ高級料亭を訪れなくと野生のものを捕らえてきて自宅で調理することも可能だとか。

 

スッポンがいる場所さえ見つけることが出来れば捕獲はそれほど難易度の高いものではないらしい。ただスッポンは泥の中に潜る習性を持っているため、数日間は綺麗な水につけて泥を吐かせなければならない手間と、あとはやはり捌き方がなかなか難しいとのことであった。

 

うむ、野生のものを頂戴して食するということはスッポンにしてもスッポンタケにしてもいくつもの高いハードルを越えねばならないということである。本来はそれが生きてゆくために「食べる」ということなのであろう。

 

というわけで、果たしてぼくが先に口に入れる食材は、スッポンになるのか、それともスッポンタケになるのか、それはいずれまたお話することにしよう。

 

ちなみに、中国帰りの友人からスッポンならぬ「亀ゼリー」なるものを頂戴して食べたことはあるが、まずくて吐きそうになったことは言うまでもない。

 

 

 

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