ぼくと、むじなと、ラフカディオ。

かつて小泉八雲ことパトリック・ラフカディオ・ハーン (Patrick Lafcadio Hearn)が、自らの感覚で古き日本を歩きまわって独自の感性で見聞を広めたように、遠く故郷を離れてあてどなき夢想の旅を続けるぼくが、むじなと、そしてラフカディオと一緒に、見たり聞いたり匂ったり触ったりした、ぼくと、むじなと、ラフカディオの見聞録です。

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マンジュウドロホコリ(Enteridium lycoperdon)- 松江城マッシュルームマップ -

人里に近い野山や、あるいは人里から少し離れた野山を散策していると必ずと言っていいほど目にする看板がある。

 

「ゴミを捨てるな!不法投棄は犯罪です!見つけ次第、即刻通報します!」

 

その看板が示すように、残念ながらもっと目にするのは看板に警告されている不法な投棄物、いわゆるゴミである。

 

警告の看板を尻目に、野山の一部はもはや不法に投棄された粗大ごみの野と山と言ってもまったく過言ではない。瓶や缶や食器などの日用品は当たり前、それならまだかわいいもので、テレビや冷蔵庫、訳の分からない工業廃棄物、果ては自転車にバイク、自動車までも捨ててある始末。

 

不法投棄だけではなく、観光やアウトドアと称して山を訪れる人々の中には、何の考えもなく安易に山にゴミを捨てる者も少なくはない。霊峰と言われる富士山がゴミの山だというが、それがいい例であろう。そういった光景には、多くの日本人の意識の低さが顕著に見て取れる。

 

一体いつどこで誰に「山は公共のゴミ箱です。」などということを習ったのだろうか。そんなやつらは山を訪れる資格など無い、登山口に設置されたモラルセンサーの熱線レーザーで焼け死んでしまえばいいとすら思う、恥を知るべきである。

 

ちょっとアツくなったので話を戻そう。

 

草木にまみれているとはいえ、山中や森の中の人工物というのは思った以上に目立つのである。特に金属製のものなどに関してはずいぶん遠くからでもその存在が認識できたりする。

 

先日きのこを探して歩いていると、少し先の枯れた樹木の上になにやら人工物らしい物が置いてあることに気が付く。はてあのピカピカした金属のようなものはなんだろうと思って近付いてみると、そのメタル感満載の物体は金属ではなく菌属であった。ぼくはてっきり誰かが放置したゴミの類かと思っていたので、驚きを隠せなかったことは言うまでもなく、そしてぼくがまだまだ菌類に関して如何に無知であるかを思い知らされたこともまた言うまでもない。

 

というわけで、今回のハンティングきのこは「マンジュウドロホコリ」である。

 

松江城マッシュルームマップ - マンジュウドロホコリ -

 

ドロホコリ科ドロホコリ属のきのこ、正確に言うと粘菌あるいは変形菌の子実体で、学名を「Enteridium lycoperdon」、漢字で書くと「饅頭泥埃」である。

 

変形菌あるいは粘菌については、以下に簡単に書き記してある。ほんとうに簡単なので読まなくてもよいのであるが、リンクをしたためる。

 

  

このマンジュウドロホコリ、近付いてみてもなおの生粋のメタル感、樹木から金属の類が生え出しているかのような不思議な感覚はあるものの、なかなかの見応えにはついうっとりとなる。見ようによってはハーシーのキスチョコレートに見えなくもない。偶然にも写真の個体は、端の方の銀色の包が破れて中身のチョコレートが見えているハーシーのキスチョコレート風である。

 

そんなことを言っていたら、もはやハーシーのキスチョコレートにしか見えなくなってきた。

 

まあそんなわけで、ゴミではなくて一安心なマンジュウドロホコリであったが、こういったケースは稀であり、山の中は人間が捨てた多くのゴミにあふれているのだ。いつの日にかそういった愚かな行為がなくなることをぼくは切に願うのである。

 

そして日本人よ、もっと意識を高く持てよ、そんなことをしていたらいつか自分たちがゴミになるぞ。

 

 

 

 

 

 

月白貉