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ぼくと、むじなと、ラフカディオ。

かつて小泉八雲が自らの感覚で日本を歩きまわって見聞を広めたように、故郷を離れて旅を続けるぼくが、ぼくの感覚でその土地を歩き回って、見たり聞いたり嗅いだり触ったりした、ぼくの見聞録です。

スギヒラタケ(Pleurocybella porrigens)- 松江城マッシュルームマップ -

きのこの中には、つい最近まで食用のきのこだと言われていたが実は危険性の高い毒きのこであることがわかったものや、そもそも毒きのこだとわかっていたが、地域によっては昔から当たり前のように食用とされているものなどがある。

 

東北のような寒さの厳しい地域では冬の保存食としてきのこを大いに活用してきた歴史があるようで、採取してきたきのこを塩蔵して冬の備蓄食にしていたりする。

 

塩漬けにするきのこの中にはベニテングタケのように完全な毒きのこも含まれていて、現在でも普通に食べている人がいるようだ。

 

いまでは冬季の食糧不足という問題は昔に比べたら緩和しているだろうが、それでも毒きのこを食べる理由は、やはり毒きのこが美味しいからであろう。

 

先日、とある「きのこ料理レシピ」のウェブログを見ていたら、胃腸系の中毒を起こす毒きのこだとわかっていてあえて、おしゃれなフレンチ風に調理して筆者自ら食べていて、その後の中毒症状までも詳細なレポートが記されていた。そこまでくるとなかなかの強者か、あるいはアホかであるが。ぼくは毒きのこがどんなに美味しいと言われても、中毒することがわかっていてまで食べる気はしないタイプである。嫌なことがあってから楽しいことが来るのならばまだよいが、美味しいものを食べてからの激しい下痢と吐き気なんて御免被りたい。

 

きのこの毒性について、あたるかあたらないかについては、個々人の体質やその時の体調、また食べ合わせや一回に食べる量などによっても大きく差が出てくる。例えばその人が持っている持病に関係があったり、酒を飲みながら食べたことが原因になっていたり、大量に毎日毎日食べていたり。

 

さて、2003年の感染症法の改正に伴う急性脳症の原因調査の過程で、2004年の秋、腎機能障害を持つ人が、あるきのこを食べた後に急性脳症を発症する事例が相次いで報告された。

 

そのきのこはそれまでは優秀な食用きのことして東北などではすすんで食べられていた種類であり、加工して缶詰にされたり人工栽培の研究対象にもなっていたきのこであったが、それ以来、毒きのこ指定を受けることとなった。

 

というわけで、今回のハンティングきのこは「スギヒラタケ」である。

 

松江城マッシュルームマップ - スギヒラタケ -

 

キシメジ科スギヒラタケ属のきのこで、学名を「Pleurocybella porrigens」、漢字で書くと「杉平茸」である。

 

主に杉の古い切り株上に折り重なって群生するきのこで、傘は無柄の白色、傘の縁部分が内側に巻いている。ヒダも同じく白色で密である。前述した通り、近年までは食用きのこの代表格であったが、急性脳症を発症後に死亡する例までも出ているなかなか危険度の高い毒きのこである。ちなみにスギヒラタケの毒成分については詳しいことがわかっておらず現在も研究がすすめられている。そしてもちろん毒成分に謎が多いため中毒時の特異的治療法は確立されていない。

 

中毒が発症したある男性は、家族とともにほぼ毎日のようにスギヒラタケを食べていたが、症状があわられたのは腎機能に障害を持つ男性だけだったという。しかし、報告の中には特に腎機能に障害を持たない健康な20代の男性の例なども含まれているということなので、油断して食べることはオススメできない。

 

とまあ、今回は少し真面目な内容を書いてみたのであるが。

 

発見した際には、木漏れ日に照らされたその美しさに感動して声を上げてしまった。しかし事前にスギヒラタケの情報は容姿を含めインプット済みだったので、シンとした森のなかでしばらく佇んだあと、少しだけゾッとしてみた。

 

つい最近まではなかなかの食菌認定だったくらいなので、確かに美味しそうだし、かつちょっと美しいのである。

 

きのこ狩りシーズン真っ只中、みなさんもきのこの扱いには気を付けなはれや。

 

 

 

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月白貉