ぼくと、むじなと、ラフカディオ。

かつて小泉八雲ことパトリック・ラフカディオ・ハーン (Patrick Lafcadio Hearn)が、自らの感覚で古き日本を歩きまわって独自の感性で見聞を広めたように、遠く故郷を離れてあてどなき夢想の旅を続けるぼくが、むじなと、そしてラフカディオと一緒に、見たり聞いたり匂ったり触ったりした、ぼくと、むじなと、ラフカディオの見聞録です。

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ビョウタケ(Bisporella citrina)- 松江城マッシュルームマップ -

小学生の頃、クラスメイトの椅子に画鋲を置くというトンデモナイいたずらが流行ったことがある。

 

いや、今思えば流行っていたのは悪ガキグループの中だけで、その被害を食らったクラスのお友だちは大いに迷惑していたことだろう。そして、残念ながらぼくは悪ガキグループとも仲よしだったので、そのいたずらにどっぷりはまっていた記憶がある。

 

基本的にはぼくはあまり群れるのを好まない質で、今も昔も中立の立場をモットーとして生きている。だから小学生の頃も、出来杉くんみたいなグループとも遊ぶし、スネ夫みたいなグループとも遊ぶし、ジャイアンみたいなグループとも遊んでいた。もちろんのび太グループとか、なんだったらしずかちゃんグループとも遊んでいた。

 

ドラえもんに例えるとわかりやすいかと思って書いてみたが、思いの外わかりにくくなったので端的に書きなおしてみると、勉強ができるグループとも仲よかったし、ワルガキグループとも仲よかったというわけである。とはいえ、ぼくはやはり個人を重んじており、グループのみんながやるからぼくもやるということはなかった。

 

ぼくがやりたいと思えばやるし、やりたくなかったらやらないのである。

 

そういう意味でゆくと、「画鋲イス」はぼくの意志でやっており、おもしろくて仕方なかった覚えがある。なんという極悪ガキであろうか。

 

というわけで、今回のハンティングきのこは「ビョウタケ」である。

 

松江城マッシュルームマップ - ビョウタケ -

 

ビョウタケ科ビョウタケ属のきのこで、学名を「Bisporella citrina」、漢字で書くと「鋲茸」である。

 

雑木林の枯れ落ちた枝や倒木などにプチプチと差し込まれた鮮やかな色の鋲のような姿はなんともかわいらしい。きのこを探して歩きまわっていると比較的よく見かけるこのビョウタケ、何度見かけても「あっ、いた。」と何故か親近感のようなものを感じてしまい、ちょっとホッとする。菌類に対しての親近感がいかなるものかは、まだ自分でもよく理解できていないが、きのこを探すという行為によってカルマでも上昇しだしたのであろうか。

 

カルマといえば、「画鋲イス」の話に戻るのだが、なんとカルマの低い行為かはあえてここでいう必要もあるまいが、小学生の頃なんて、そんなものである。

 

せっかくなので画鋲イスがいかなる「遊び」かということについて、ここで少しだけ触れておこうと思う。

 

まずは画鋲を数個ほど隠し持つことから始まる。画鋲はもちろん自前などではなく、学校の画鋲である。小学校の教室のいたるところにはたくさんの画鋲が眠っている、まあ起きているものもいるが。あれほど画鋲にあふれている空間も他にはないのではなかろうかというくらい画鋲には事欠かない。

 

手に入れた画鋲をこっそりと手元に忍ばせ、授業の合間の休み時間や、あるいは朝の会や帰りの会、なんだったら授業中に、前の席のお友だちや横の席のお友だちが席を立ったり席に着いたりする瞬間を見極めて、椅子にこっそり画鋲を置くというのがもっとも基本的なやり方である。

 

何も知らないお友だちが画鋲の置かれた椅子に座るやいなや、画鋲の鋭い針が尻を貫き、教室に「ぎゃあ」と悲鳴がこだまするのである。

 

この遊びにはいくつかの注意点もある。

 

まず先生が教室にいる場合に行為に及ぶと、十中八九犯行がバレてしまう。あたりまえである。しかし上級者ともなると、まったくバレずに「授業中画鋲イス」なる技を華麗にこなすものも出てくる。ちなみにぼくはその技に挑戦したがあっけなく見つかり、廊下に正座させられたことは言うまでもない。

 

もうひとつは、画鋲イスを仕掛ける相手を選ばないと、あとで大喧嘩になるという点であろう。ぼくは基本的に前か左右の席のお友だちしかターゲットにしなかったので、ある時、クラスの悪ガキグループの猛者に画鋲イスを仕掛けて、もちろん大乱闘になった。

 

ぼくにとって画鋲イスは「いじめ」ではなくあくまでも「いたずら」だったので、クラスで弱い立ち位置にいるとか、気に入らない奴だとかいう理由で画鋲イスを仕掛けたりすることはなかった。あくまで平等主義を貫いていたし、時にはすごく仲のよい友だちに仕掛けて、やはり大喧嘩になったりしていた。

 

この遊びにはぼくなりのポリシーというか鉄則があって、ターゲットはぼくの前か左右の席、誰かからの依頼や指示はまったく受けない、先生が教室にいても関係ない。人によってはそんなルールは関係なくいわゆる「いじめ」としてやっている悪ガキも多かったが、ぼくは違ったのである。簡潔に言えば、小学生のぼくなりの平等ということであろう。(人の尻に画鋲を刺しておいて、いったい何が平等だか・・・)

 

というわけで、この罠を仕掛ける範囲が前か左右のお友だちに限られてくるという性質上、一度やったら二度目はまず引っかからない。だからこの遊びにはまっていたとはいえ、自ら手を下したのは数回程度だったと思う。

 

そんなド低いカルマの小学生だったぼくも、昨今きのこと触れ合うことで徐々にカルマが上昇しつつある。

 

きのこにはそんな側面もあるという、ブッダの如き説法になっていれば幸いであるなあ。

 

 

 

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月白貉