ぼくと、むじなと、ラフカディオ。

かつて小泉八雲が自らの感覚で日本を歩きまわって見聞を広めたように、故郷を離れて旅を続けるぼくが、ぼくの感覚でその土地を歩き回って、見たり聞いたり嗅いだり触ったりした、ぼくの見聞録です。

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セミノハリセンボン(Isaria takamizusanensis)- 松江城マッシュルームマップ

もしあなたが小さな森を訪れて、その森を存分に楽しみたいと思うなら、まずはじめにどんなことをするだろうか?

 

ぼくだったら、まず森の入口でしばらくのあいだしゃがみこんで、自分の目線をぶっ壊してみる。少ししゃがんで森を眺めるだけで、その世界は日常と大きくかけ離れた姿を見せる。

 

木々の間に体を揺らす草花、地表を覆う様々な苔、そしてそこに息づくたくさんの生き物。

 

草木に目をやると、木の表面や葉の一枚一枚や花びらに、無数の生物が存在していることに気が付く。その生物を目で追ってゆくと、ぼくの視界はずんずんと森のなかに引きずり込まれてゆく。そしてぼくの体はいつの間にかその大きさの概念すら失ってゆく。

 

そういう風に森を見ないと、本当の森は見えない。

そういう風に森を見ないと、きのこは見つからない。

 

というわけで、今回のハンティングきのこは「セミノハリセンボン」である。

 

セミノハリセンボン(Isaria takamizusanensis)- 松江城マッシュルームマップ

 

バッカクキン科イザリア属のきのこで、学名を「Isaria takamizusanensis」、漢字で書くと「蝉針千本」である。

 

各種セミの体を宿主とし、その全面に小さな虫ピンのように生じるきのこで、いわゆる冬虫夏草と呼ばれる部類の不完全型に属する。冬虫夏草は、完全型(有性生殖)と不完全型(無性生殖)の二つのタイプがあり、胞子を飛ばすいわゆるきのこ部分の名称がそれぞれ異なる。完全型のきのこはストローマ、不完全型のきのこはシンネマと呼ばれる。

 

そしてこのセミノハリセンボンこそが、ぼくの人生で初めて出会う冬虫夏草、感慨深いものがある。発見時には歓喜のあまり絶叫したことは言うまでもない。

 

冬虫夏草は、地べたを這いまわるようにして探さないとまず見つからないと言われるが、確かに。ぼくはこの夏、きのこのために夢中で地べたを這いまわり、いったいどれだけの虫に体中を刺されたことか。

 

そしてぼくは懲りもせず、地べたを這いまわり続けるのである。新たなるきのこを求めて。

 

 

 

八日目の蝉 (中公文庫)

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森の生活〈上〉ウォールデン (岩波文庫)

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月白貉