ぼくと、むじなと、ラフカディオ。

かつて小泉八雲ことパトリック・ラフカディオ・ハーン (Patrick Lafcadio Hearn)が、自らの感覚で古き日本を歩きまわって独自の感性で見聞を広めたように、遠く故郷を離れてあてどなき夢想の旅を続けるぼくが、むじなと、そしてラフカディオと一緒に、見たり聞いたり匂ったり触ったりした、ぼくと、むじなと、ラフカディオの見聞録です。

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ヒイロガサ(Hygrocybe punicea) - 松江城マッシュルームマップ

いまぼくの手元にあるきのこ本はちょっとコンパクトサイズなため、見つけてきたきのこがどうにもこうにも載っていないケースが多々ある。

 

似てるんだけれどちょっとちがうかなあとか、形と模様は一緒なんだけれどカサの色がまったく違うなあとか、きのこの品種を特定するのにもなかなか時間と根気がかかる。まあそれが楽しくて仕方がなくなるので、最近はきのこの本ばかり舐めまわすように読んでいる。

 

このきのこも特徴的な割に色々と迷ったきのこである。というわけで、今回のハンティングきのこは「ヒイロガサ」である。

 

松江城マッシュルームマップ - ヒイロガサ -n

 

ハラタケ目ヌメリガサ科アカヤマタケ属のきのこで学名を「Hygrocybe punicea」という。漢字で書くと「緋色傘」であろうか。

 

黄色の柄に緋色のカサを持つ小さなかわいいきのこである。最初はアカヤマタケかなあと思っていろいろ調べるも、形状が微妙に違うことが気になりいろいろと調べていてこの名前を見つけた。まあアカヤマタケ属ということなので同じようなきのこなのかもしれないが。

 

ヨーロッパからアメリカからその分布は広範囲に及び、ヨーロッパでは可食とされているが北アメリカでは食用には適さないとされているそうだ。ちなみにアカヤマタケに関しては、体調や体質によっては胃腸系や神経系の中毒を起こすとある文献には書かれている。 

 

昔は多くの毒きのこが食用とされてきた歴史があり、いまでも完全に毒きのこ認定されているきのこをいろいろ工夫して食用にしている人も多いと聞く。その理由はまあ、地域によっては食糧難の時代に生み出された工夫であり、もうひとつは毒きのここそ「うまい」からであろう。

 

「サスケ」や「カムイ伝」などの忍者漫画で知られる白土三平はかの幻覚きのこ「ベニテングタケ」を日常的にバクバク食べていたという。

 

このきのこは大量に取れるので、私の少年時代には朝早く三、四人連れ立ってそれぞれの背負いかごをリヤカーにのせ、出発したものである。日暮れ近くに帰ってくるとその日のうちにゆでて塩蔵にする。天気が良ければ乾燥してもよい。塩蔵したものは正月頃が食べ頃になるので、正月料理に用いられる。

 

里芋やコウヤドウフと一緒に煮たり雑煮やウドンのだしとして欠かせないものである。取ってきてすぐに食べる時には一人一本までが限度だろう。それでも個人差や体調によってたまに中毒を起こすことがある。例をみると、すきっ腹、疲労、アルコールの三拍子がそろうとどうもやられるらしい。私は一日に一本焼くか、油でいためたりして酒の菜にするが、実に味の濃いきのこなので、先にこのきのこを食べると他のきのこは食べられなくなってしまうほどである。 

 

この文章など読むと、松江城マッシュルームマップ、そろそろ試食の段階に踏み切ろうかと、切に思う。嗚呼、きのこ食べたい。

 

 

 

 

 

 

月白貉