ぼくと、むじなと、ラフカディオ。

かつて小泉八雲ことパトリック・ラフカディオ・ハーン (Patrick Lafcadio Hearn)が、自らの感覚で古き日本を歩きまわって独自の感性で見聞を広めたように、遠く故郷を離れてあてどなき夢想の旅を続けるぼくが、むじなと、そしてラフカディオと一緒に、見たり聞いたり匂ったり触ったりした、ぼくと、むじなと、ラフカディオの見聞録です。

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澄水山のスリットダムB型 - 松江百景

松江にはたくさんの山がある。

 

山がある場所には決まって砂防ダムなんてものがある。

 

砂防ダムとは土砂災害に特化した防災設備であるが、最近では区別化を図るために砂防ダムとは呼ばずに砂防堰堤と呼ぶのだそうである。

 

ぼくは山の中に迷いこむのを趣味としているので(登山とはちょっと違い、迷いこむことに特化したアクティビティである。)、砂防ダムにはよくお目にかかるのだが、その役割は重要な防災設備であるとともに、人工建造物としての景観の楽しみもあることは言うまでもない。

 

というわけで今回の松江百景、「澄水山のスリットダムB型」である。

 

松江百景 - 澄水山のスリットダムB型 -

 

このダムを発見したのは、ある滝を見にゆこうと思って山に分け入った時であった。しかし、その滝がなかなかハードな藪漕ぎと崖登りの先にあるようだったので、その日の装備の軽さを考慮して諦めた際、その行程でみつけたレアモノである。

 

この砂防ダムは通常よく見かける砂防ダムではなく、表題の通り「スリットダム」というタイプのものである。

 

これは流水の流下を助け、流木や巨石だけを受け止めることに特化させたものであり、ダム中央部の堤体をなくし、中央部に鋼製の枠などを設けた透過型砂防堰堤の構造をしている。

 

写真を見てもらってもわかる通り、山の樹木との一体感がなんと言えず素晴らしい景観を生み出していることがわかる。その巨大な姿と年月による荒廃感は、さながら未来世界における何らかの古代遺跡か、あるいは機能停止した巨大ロボット兵器ような趣である。

 

砂防ダム愛好家にはなかなかたまらない一品であることに間違いはない。ちなみにこのダムがある場所の時点でなかなかの藪漕ぎ感がある。まあそういう場所だからこその見応えだといえよう。

 

ちなみにこのダムに到達する途中には旧式の巨大な砂防ダムもドスンと身を構えて立ちふさがっており、その脇の断崖絶壁的な足場を通り抜けるルートもなかなかのスリルであった。

 

そんなわけで、砂防ダム愛好家の方々はぜひ訪れてみてはいかがだろうか。

 

ちなみにこのスリットダムを越えて、藪漕ぎと崖登りを経た先には、「大滝」と呼ばれる素敵な滝が待っているそうなので、また草木が枯れ出す冬季にでもチャレンジするつもりである。

 

 

 

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月白貉