ぼくと、むじなと、ラフカディオ。

かつて小泉八雲ことパトリック・ラフカディオ・ハーン (Patrick Lafcadio Hearn)が、自らの感覚で古き日本を歩きまわって独自の感性で見聞を広めたように、遠く故郷を離れてあてどなき夢想の旅を続けるぼくが、むじなと、そしてラフカディオと一緒に、見たり聞いたり匂ったり触ったりした、ぼくと、むじなと、ラフカディオの見聞録です。

follow us in feedly

随筆

蜘蛛の話

きょう病院の待合室でソファーに座っていたら、足首にこそこそっと何かが這っている気配がしたので目を向けると、翡翠のような緑色をした足の長い蜘蛛が、どこから来たのか知らないけれどぼくの足首を這い回っている。 うわっと思ったが、あまりビビットに反…

祖母のトマトソース

ぼくが東京でひとり暮らしをはじめた頃に、はじめて自分で買った料理本はイタリア料理の本だった。 365日わが家でもイタリアン 作者: 西巻真 出版社/メーカー: 文化出版局 発売日: 1998/07 メディア: 単行本 クリック: 1回 この商品を含むブログ (3件) を見…

翡翠色の百足

何時かも知れぬ真夜中、 ぎゅうと胸を押さえつけられるような寝苦しさに目を覚まして真っ暗闇で目を開けると、 翡翠みたいな体色をした、ゆうに十メートルはあろうかという百足が部屋の天井に張り付いていて、右往左往している。 はっと思って息を殺す。こち…

モーリス・ホワイトの思い出

モーリス・ホワイトが死んでしまったらしい。 昔ぼくの実家は呉服店を経営していたのだが、 まあ時代の流れで、片田舎で呉服店などやっていても商売が成り立たなくなり、ぼくの父が店を引き継いだ時から、生地や糸やボタンなどを扱うコットンショップと、レ…

サイクロプス

ぼくはここ数年、暖房器具というものをまったく使わないで生活している。 暖房器具を使わなくなったのは、南国に移り住んだわけでも、体を義体化して外気温に影響を受けない体になったわけでもない。 ただ何となく、ストイックに生きているだけである。 ちな…

真夜中の空洞

昨日の夜なのか今日の朝なのかは定かではないが、昔の出来事が夢の中に出てきたので文章にまとめてみる。 ほんとうにあったことで、今でも謎の残る話。 高校時代、まだ実家に住んでいた頃のこと、ある日真夜中に寝苦しくて目が覚めたら、細いベランダ越しの…

フルーツ牛乳と巨大ジャングルジム

ここしばらく、眠っている間に夢をたくさんみる。 みなさんも御存知の通り、夜の夢は目が覚める瞬間に忘れてしまうことが多いのだが、かろうじて夢の記憶を握りしめたまま目を覚ますことがある。 きのうの夢、 70年代のSF映画に出てくるタイムワープホールみ…

嵐の夜に屍を埋めに来る男

昨日の夜中から朝にかけて、ものすごい強風が吹き荒れていた。 実家はもうだいぶ古いので、まさに家が震えんばかりだった。 真夜中にその震える音で目が覚めてから朝まで、夢と現が定かではなかった。 その強風の中、誰かが家の周りをぐるぐると回って、最後…

真冬の怪談 - 私的金縛り考 -

夏の暑さを忘れるために怖い話をするってえのが、まあ怪談の趣旨かどうかはしらないけれど、じゃあ冬の怪談は寒さが増して凍え死ぬだろうかってなわけで、久方ぶりにちょっと怖いことがあった。 「金縛りにあった!金縛りにあった!」ってよく言うけれど、ぼ…

ヤツメウナギ型大量殺戮兵器

忘れる夜の夢はすぐ忘れるくせに、忘れない夜の夢はいつまでも、頭をさまよってぼくを夜へと誘う。 かつて江戸川乱歩が言っていた。 うつし世はゆめ よるの夢こそまこと 江戸川乱歩 (コロナ・ブックス) 作者: 太陽編集部 出版社/メーカー: 平凡社 発売日: 19…

夢の涯てまでも

「あなたの夢に、色はついていますか?」とたずねられた。 夢判断 上 (新潮文庫 フ 7-1) 作者: フロイト,高橋義孝 出版社/メーカー: 新潮社 発売日: 1969/11/12 メディア: 文庫 購入: 10人 クリック: 91回 この商品を含むブログ (39件) を見る 夢判断 下 (新…

映画鑑賞概論 - 夜店の焼きそば考 -

つい先日、スター・ウォーズの最新作、「フォースの覚醒」を鑑賞するため映画館に足を運んだ。 映画 スターウォーズ フォースの覚醒 ポスター 42x30cm STAR WARS エピソード7 [並行輸入品] 出版社/メーカー: Star Wars: The Force Awakens メディア: この商…

「ストツー」的タバコのポイ捨て改善方法

こんな田舎でも、吸い終えたタバコを排水口に捨てている人をよく見かける。 大抵は中年以降の男性で、スーツを着ている偉そうな輩が圧倒的に多い。けっして偏見ではなく、目の当たりにしているから。 そして、つい先日は某国役所勤めの職員だと明らかにわか…

我が二千十五年に一片の悔いなし!

2014年の暮れにとんだ大石につまずいてよろめいたまま幕を開けた2015年だったが、そのつまずきが功を奏したのかどうかはさておき、人生の中でもじつに自由に生きた一年であり、有意義かつ実りある一年でもあった。 前半の数ヶ月は、去年のつまずきのダメージ…

トミカ スター・ウォーズ TSW-10 AT-AT

スター・ウォーズ新作「フォースの覚醒」公開真っ只中ということで、 やはりスター・ウォーズ愛好家としては、スター・ウォーズのおもちゃが欲しくなってしまう病が再発気味な今日このごろ。 もう20年も前になるだろうか、スター・ウォーズのフォギュア蒐集…

サンタクロース・フレイバー

もうずいぶん前の話になるけれど、大阪に住む伯母が亡くなった。 伯母はぼくの父の姉にあたる人物で、大阪の大きな病院で総婦長を務めていた。伯母は頭がよく努力家で、お酒が大好きで、そしてとてもやさしい人だった。 毎年クリスマスの日になると、伯母か…

優先席

ウィークデイの昼過ぎ、空いている列車に乗り込み、ふと車内を眺めると、座席にはまばらに人が座っているほど。 灰色のシートに包まれた優先席には誰も座っていない。 だから、優先席に座ってみる。 誰も座っていないのだから、気兼ねなく、ただ少し気兼ねを…

更かし夜

窓に顔を近づけたら、外の涼しさが窓越しに漂っていて心地よい。 ここに引っ越してきてから毎日眺める、四角くてクリーム色の給水塔、遠くのマンションの切れかけた非常灯、いつもどんより灰色の空、もう死んでしまったもしゃもしゃのコロコロ猫、まだ生きて…

地下水

真っ暗な水の中にぼくはいた。 本当に真っ暗すぎて、暗いということもよくわからなかった。 永い眠りから覚めたばかりで、まだ目を閉じたままだと思っていたら、すでにぼくの目は開かれていて、真っ暗を見ていた。目を瞑っていた時と変わらない真っ暗。じゃ…

ダンテ日和

考えるべきことはたくさんある。 そのひとつひとつに、小さな不安と、不安よりもだいぶ小ぶりな希望がつきまとう。 昔、まだ二十代の前半に、アルバイトの帰りに雨が降り出した。 その時、別にいやなことがあったわけでもないのに、一人暮らしの家に帰るのが…

明けない悪夢

さいきん、頻繁に怖い夢をみて真夜中に目が覚める。 本当に怖い夢なので、目が覚めているのかどうなのかさえわからなくなり、しばらく真っ暗な部屋の中で、身動きができずにいる。 今日の明け方、最後にみた夢。 ぼくはどこかの学校の校舎のような所にいる。…

こわい携帯

新宿駅の構内を歩いていたら、ぼくの前を10代後半の女の子二人と50代くらいの女性が並んで歩いていた。 すると女の子のひとりが突然、 「ママ、携帯が鳴ってる!こわい、こわいよ!!」 と言い出したのである。 そこでその三人が親子なのかなと、ふと思う。 …

花言葉

散歩をしていて、すごく素敵なお庭を見つけた。 家のまわりには垣根もなく、一見するとただ雑然とたくさんの草木や花が放置されているように思える。 ただよく見てみると、とてもとても放置して出来るような空間ではなく、筆舌には尽くしがたい。 ひとつひと…

その向こうに見えるもの

ここ数年でめっきり眼が悪くなった気がする。 中学生くらいまでは、確かぼくの視力は2.5はあったんじゃないかと記憶している。 それがいつの間にやら急降下して、今では家でテレビを観るのにも眼鏡を探すまでになってしまった・・・。 昔は視力が低下するな…

ゴミの中のムルシアン

近所のゴミ捨て場に空き瓶を捨てにゆくと、小さなムルシアンが鎖でつながれて捨てられていた。 その顔には精気がなく、ひどく荒んだ様子だったので、なんだか可哀想になって家に連れて帰った。 鎖を解いて、綺麗に体を洗って、部屋に放してみると、ゴミ捨て…

ため息カナブン

道を歩いていると、歩道の真ん中でカナブンがひっくり返っていた。 手だか足だかわからないものを、バタバタと動かしながら、おなかを空に向けて、ゆりかごのようにゆれていた。 「ひっくりかえってしまったのだね。」 夏も、もう終わるのに、こんなところで…

杜撰の食堂

ちょっと前に、とあるお蕎麦屋さんでお昼を食べようとおもって入店すると、日替わり定食というメニューがあったので、 「きょうの日替わり定食はなんですか?」 とたずねたところ、 「きょうは蕎麦です。」 と少ない情報量で言われた。 蕎麦屋の日替わり定食…

戦慄怪奇!!見知らぬ配達員

荷物を届けにくる某S急便のぼくの地区担当のひとりで、届け方が荒いとうか雑というか、もはやホラーな域の人間がいる。 突然玄関のドアが「ドンドンドンッ!」と激しく鳴ったと思うと、すかさず「ガチャガチャガチャッ!!」とドアノブが暴れだす。 何だと思…

地獄のワンタッチ

押せばすんでしまうワンタッチな「ボタン」って、まったくいらないと思う。 いや、いらないというか、 だめだと思う。 ぼくの実家の方では昔(いまでもだが)、時期によって電車のドアが自動では開かなかった。学生時代に電車通学だったぼくは、時期限定でド…

ある日の共犯者たち

とある日の出来事。 用事を終えて深夜バスに乗るべく、ある駅の待合所でバスを待ちながらうだうだしていると、 高校生二人がその待合室に入ってきて雑談の後去っていったのだが、ふと見ると二人が座った待合所の簡易ソファーにひとりがサイフを落としていた…