ぼくと、むじなと、ラフカディオ。

かつて小泉八雲ことパトリック・ラフカディオ・ハーン (Patrick Lafcadio Hearn)が、自らの感覚で古き日本を歩きまわって独自の感性で見聞を広めたように、遠く故郷を離れてあてどなき夢想の旅を続けるぼくが、むじなと、そしてラフカディオと一緒に、見たり聞いたり匂ったり触ったりした、ぼくと、むじなと、ラフカディオの見聞録です。

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2015-08-21から1日間の記事一覧

神隠し

「そういえば坂田さんとこの史郎ちゃん、おとといから行方不明だって! あんた同級生だったでしょ。今テレビのニュースで流れてて、お母さんびっくりしちゃってさ、さっき自治会長さんに用事があって電話したんでちょっと聞いてみたらさ、やっぱり本当みたい…

はじまり

サンライズ出雲で東京に降り立った朝、その薄汚れたホームには浦島さんがただひとり、笑顔で待ち構えていた。 「おかえりなさいと言ったほうが正しいでしょうな、 待ちくたびれましたよ白酒さん、ずいぶんとゆっくりな足での到着じゃありませんか、いやいや…

おとめ山

ぼくと浦島さんは新宿区にある小さな森の中にいた。 池袋での一族の襲撃からもう6時間ほど過ぎた真夜中だった。 根元から捻りちぎられた浦島さんの左腕をぼくはさっきまで必死で抱きかかえてたが、逃げる途中で浦島さんはぼくの抱える自分の左腕に右手を添え…

片腕の男

「浦島さん、あなたといるとこんな時でも、なんて言ったらいいんだろう、笑いがこみ上げてきます、 嘘の笑いじゃなくて、本当に楽しくておかしくて笑ってしまうときのような笑いが、体の奥の方からグルグル渦を巻きながら上ってくる気がします。」 浦島さん…